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デパガあいり
【レイプ 官能小説】

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あばかれる闇-5



「お腹の子の父親は、真ちゃんかもしれへんし、違うかもしれん。せやけど、真ちゃんの子の可能性がある限り、絶対に堕ろさへん……慶子ちゃん、泣きながらそう言うとった」


「……どういう……意味です……?」


この数ヶ月の間に、慶子に何が起きていたのだろう。
自分と連絡が途絶えた寂しさで衝動的に浮気でもしてしまったというのか……。


しかし……いくら寂しいからといって、あの慶子がそんな行動をとるとは思えない。


三田村はすぐには感情の整理が出来そうにはなかった。


「慶子ちゃんな、理由は言わへんねんけど、もう君には一生会わへんて言うねん――でもな……だからこそ、お腹ん中の命を大事にしたいんやて………」



塚田は、もうずいぶんと短くなってしまったタバコを、灰皿の上でぎゅっと捻り潰した。



「ごめんな……変な話……聞かして……」



そう言って悲しそうにため息をついた塚田の顔は、とても頼りがいがある兄のように思えた。




「このこと……絶対、君にだけは言うなって慶子ちゃんにしつこう釘刺されたんやけど……我ながら口軽いわ」


「いえ……なんていうか……僕がしっかりしてないばっかりに……。危うく一生後悔するところでした……本当にありがとうございます」



長期欠勤した上に退社すると言っている部下のためにここまで親身になれるのは、上司だからということではなく、塚田という男の持つ底抜けに温かい兄貴気質のなせる業なのだろう。


三田村は、塚田のような上司を持つ慶子が、心底羨ましく思えた。


喫煙ルームを出る時、塚田が何気ない口調で三田村に聞いてきた。


「そや……真ちゃん――ここの社員で、カワセってヤツ、知ってるか?」


「――えっ?」


唐突に知り合いの名前を出され、三田村は一瞬驚いて返答につまった。


「あ…は……はい。うちの店で婦人服のフロア主任をしてる人ですが……」


「ふぅん……そうなんや……」


その瞬間、ぼんやりと遠くを見つめる塚田の目に、ギラリと鋭い光が宿ったように見えた。


「あのな、真ちゃん―――。慶子ちゃんが最後に出勤した日の夕方な、『Tデパートのカワセ』って男から慶子ちゃんのデスクに電話あったみたいやねんけど―――そいつ……なんか知ってるかもしれへんな」


塚田はさらりと言って歩き始めたが、実は今日塚田が一番伝えたかったのは、この名前なのだということが三田村にはわかった。


三田村の先輩である人間に対して「そいつ」という呼び方をしたところに、塚田の明確な敵意を感じる。


「……川瀬……主任が……」


坂田のマンションの玄関でばったりと川瀬に出くわした時の記憶がじわじわと蘇って来た。


あの時感じたなんとも言えない違和感。


「坂田会」と「あいり」と「慶子」――そして――そこに不気味に絡む「川瀬昭彦」の存在。


「……まさか……」


慶子にそんなことが起こるはずはない。
起こってはならない―――。


考えまいとしていた可能性が、頭の中で具体的な形をとろうとしていた。


身体の芯がガタガタと奇妙な音をたてて震えている。


「―――真ちゃん。君の人生やし、ワシはこれ以上口挟むつもりはない。……会社での君の立場とかもあるやろうし……。事実を知った上で――後悔のないように自分で決めてくれたらええよ」


そう言いながら塚田が手渡してくれたメモには、慶子の新しいアパートの住所が書かれていた。


「ほんなら――――気ぃつけなあかんで。……いや逆か……帰るんワシやったな……ハハハ」


最後まで優しい塚田の言葉がじんと胸に染みた。


「あの……わざわざ……ありがとうございました!」

深々と頭を下げて塚田の背中を見送りながら、三田村の気持ちはもうレディスフロアに向かっていた。





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