華麗なる逃亡日記 〜A reminiscent talk〜-5
「…穂沢さん、どーするの?」
「‥‥‥」
程なくして、公園に到着した二人を迎えたのは、大の字になって気絶している男たちだった。
「ぶっ飛ばす手間が省けたね」
「‥‥‥」
複雑な表情の美奈に対して、御幸は笑顔を浮かべている。
「諦めて帰ったほうがいいって」
「…御幸くん。この人達、物陰に運んで」
「は?なんでさ?」
「今のうちに息の根止めるから」
驚いて美奈の方を見ると、表情が本気だと語っている。
「そんな事できるわけないだろ!」
「誰も見てないし、こっそりやれば大丈夫。ばれないはず」
「そうじゃなくて!殺人はダメだろ!」
二人が言い争っていると、後ろで男が起き上がった。
「…んん?ここは」
「な!?」
いきなりのことに逃げることも忘れ、固まってしまう二人。
「んんっ?貴様はさっきのくそガキ!」
見つかって声を掛けられてしまい、御幸はなんとか誤魔化そうとする。
「えっ…ひ、人違いじゃないですか?」
「いいや!俺の記憶力をなめんなよ!」
「いや…別になめては…」
「しかも女まで連れて!当て付けか!?」
「そんなつもりじゃないですけど…」
「あぁ、そうだよ!どうせモテねーよ!」
男は勝手に逆上すると、顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らす。
「ここで会ったが百年目ぇ!二度と拝めない面にしてやる!」
すると、美奈がひどく慌てた様子で耳打ちしてくる。
「どうしよう…あんな古くさい台詞を生で聞いたの初めて!録音すればよかった…」
「‥‥‥」
「えぇーい!いちゃいちゃするなぁぁ!」
再び男が叫ぶ。叫ぶだけでは飽き足らず、御幸に殴りかかってきた。
「うぉっ!」
その重たそうな拳を紙一重で避け…られずに軽く吹っ飛ぶ。
「御幸くん!?」
「へっ。ガキが意気がるからだ」
美奈は急いで駆け寄ると、上半身を起こしてやる。
「大丈夫!?」
「あぁ…なんとか…」
「逝くんなら早く逝って!」
「…おい…」
「友の復讐を心に誓い、悪と戦う美少女…うん、いい感じ!」
「…おいおい…大丈夫だって…」
だが、本当に大丈夫かは微妙だ。
「大丈夫なら早く新必殺技を見せて!」
「なんだよそれ…」
「一度負けた敵を新必殺技で倒すのは主人公の特権よ!」
「‥‥‥」
もはや突っ込む気力もないらしい。
「今こそ、地獄の修業で体得した『ミユキ召使いパ〜ンチ(パシリ仕様)』を見せるときよ!」
「‥‥‥」
御幸はそこまで聞いて、ふらつきながらも立ち上がった。
「御幸くん。ちゃんと技名言ってね!」
「‥‥‥」
美奈の声援(?)にも全く反応せずに、頼りない足取りで男に向かっていく。