一人目:アリア-2
さて、ではその儀式がどんなものなのか…。
これもまた、多種多様な様式があるので、終わった儀式について話すとしよう。
今回は、つい最近、純潔の乙女に選ばれたばかりのアリアの儀式について話そう。
アリアは元々、キャンバラの国民が祈りを捧げる塔に遣えるシスター見習いであった。
その信仰心は厚く、もはやいつシスターに昇格してもおかしくなかった。
ある日、アリアは暴漢に襲われた。
未遂に終わったものの、アリアの心は深く傷ついた。
未遂とは言え、暴漢に襲われたこの穢れた身では、もはや神に遣えるシスターにはなれないと、アリアは悲嘆にくれていた。
日々を嘆いて過ごした。
そんなアリアの元に、突然、あの天原の庭から純潔の乙女に選ばれたと知らせがきたのだ。
それによって、アリアが純潔である事は証明された。
アリアは穢れた身ではないと、神に遣える事が許されたと喜んだ。
シスターたちも喜び、皆、笑顔でアリアを見送った。
それからすぐに、アリアは天原の庭へ向かった。
天原の庭は、まさにこの世の楽園であった。
美しい世界が、そこにはあった。
純潔の乙女達は皆、優しく、すぐに仲良くなった。
アリアは幸せであった。
アリアは満たされていた。
ただ…。
天原の庭に来て数週間。
アリアは、自分がなかなか神託に名前があがらない事を気にしていた。
秘儀の交わりに呼ばれない事を気にしていたのだ。
秘儀の交わりに呼ばれてこそ、真の純潔の乙女として認められる。
秘儀の交わりの開始と終了の知らせは、神官を通じてキャンバラの全ての国民に伝わるのだ。
もちろん、儀式に参加した純潔の乙女達の名前も知らされる。
その為、アリアは余計に気にしていたのだ。
早く真の純潔の乙女として認められて、シスターたちを喜ばせてあげたい…そう、アリアは思っていた。
そして、遂にその時はきた。
神託に名前があがったのだ。
神官がゆっくりと神託の内容を読み上げる。
アリアは膝まずいてその神託の内容を聞いていた。
純潔の乙女アリアは真昼の時、太陽の間に来るべし。
そこで、人の姿を借りた太陽の神と秘儀の交わりを行うべし。
読み終わった神官は、アリアに太陽の間の鍵を渡すと、再び別の神託を読み上げ始めた。
どうやら今日は、アリアの他に三人の純潔の乙女達が個々に神々と秘儀の交わりをするらしかった。
アリアは初めて受け取った儀式の間の鍵を胸に抱いて、涙を流した。
儀式の間は、神々によって部屋が決められている。
今回は太陽の神なので太陽の間での儀式となっていた。
アリアは全ての神託を神官が読み終え、純潔の乙女達に伝え終わると、その身を清めに湯殿へと走った。
アリアは己の身を清めながら、高鳴る胸の鼓動を感じていた。
初めての、秘儀の交わり。
アリアはもうすぐ、真の純潔の乙女として認められようとしていた。