男と女の愛の告白(4)-3
もちろん、相手の女が誰でも良いって訳じゃないけどさ
もし好みの女で、そういうチャンスがあれば抱きたいと思うのが男さ。
でも、現実にはそう簡単にはいかないのが世の中だがね。
世の中っていうのは上手くできているのさ。
でも、そんな男と、旦那に相手にされない女があるきっかけで知りあえば
とうぜん危ない関係になるんだよね。
そうそう、始めに言ったけれど、
俺がやばい女と付き合ったときの話をしようか。
聞きたいかい?
じゃあ話してみようか。
滅多にない経験になったけれどね。
その女と知りあったのは、本当のあるきっかけだった。
二年くらい前のことだけれど、俺は或る場末のスナックで飲んでいたんだ。
始めはその女が、
或る男の情婦だってことは、勿論知らなかったんだ。
俺がカウンターで飲んでいると、後から入ってきたのがその女だった。
一人なんだよ、たまに女連れ二人の客は見たことがあるけれど、
一人だけって言うのも珍しくねて。
目元が麗しい凄い美人だった。
始めは座る場所を決めかねて、俺の横から大分離れて座ったんだ。
その日の客は、俺とその女だけだったんだよ。
なんか退屈そうで、時間を持て余しているような素振りなんだよ。
でもね、それが何とも言えない雰囲気でね。
ワイングラスを傾けていてね、その格好が似合うんだ。
煙草を取り出して、ライターで付けて吸っているさまは絵になる。
ときどき、ちらと俺を見たりしていたかな。
俺の勘違いかもしれないけど。
みたところ、
年は俺よりも少し上って感じだけど、そんな落ち着きがある女でね。
何となく眼が合い、俺は軽く挨拶したんだ、(どうも)って。
女の、軽く微笑んだ口元が妙に寂しそうだった。
で、俺は洒落たモダンジャズが流れている空間だけが気になったんだ。
マスターは隅の方でグラスを拭いているし、
話は途切れているし、女は黙って飲んでるし、
マイルス・デイヴィスの甘いトランペットだけが(サマータイム)を吹いていたっけ。
何となく女に声を掛けたくなったんだ。
(良かったら一緒に飲みませんか)って気障にね。
そうしたら、その女も(そうね、じゃあ)と言って俺の隣にきたんだ。
女の話を聞いていると、この店は初めてだというんだよ。
それで(どうして、一人でここへ?)と言うと、
彼に捨てられて、気分が落ち込んでいるので飲みたかったと。
ストレートにそんなことを言う女に、俺は驚いたね。
聞いた俺も、俺だけどね。
俺は思ったんだ(女でもそういう気持ちになるのかな)って。
少し話をして、気が付いたんだけど、どこか違うんだよね。
いわゆる普通の女と感覚が違うというか、OLでも奥さんでもない感じでね。
今まで俺と出逢った女達と違ってた。
どこか、落ち着いた姉御肌を感じさせる魅力的な女だった。
それは女が放つ妖しい雰囲気かもしれない。
でも、冷たい感じはしなかった。
どこかで俺と引き合うのを何となく感じていたんだ。