黒い魔獣-9
「な…何か助かる方法は?!」
焦るキャラにオーウェンは顔をしかめる。
『その男はキアルリアの何じゃ?』
「私の惚れた男です」
あっさりと、しかしはっきり答えたキャラにアースは嬉しそうに微笑んだ。
『ならば教えられぬな。そんな半端者に大事なキアルリアを嫁にはやれん』
いっその事死ね、というオーウェンの答えに、全員がキレた。
「その大事なキアルリアを守れなかったクセに偉そうな口たたくな!!この髭ジジイ!!」
「ふざけんな!何様だてめぇ!!」
「それが助けを求める者に対するファンの礼儀か!!」
アース、キャラ、国王が同時に怒鳴り、ベルリアは無表情で小刀を鏡に突き立てる。
パキンッ
鏡が割れる音に全員が我に返った。
「み…みんな短気だなあ……」
「いや……割らなくても良かったんじゃねえ?」
「しまった……王ともあろう者が……」
微妙な空気のなか、それぞれ適当な事を言ってごまかす。
「何様って、守護神様だっつうの……結局、居場所がバレただけで何もわからなかったな……」
キャラは1人ツッコミをしつつ、ポリポリと頬を掻いてアースを見る。
「まあ、いいさ。1週間はあるしな」
アースは自分のために怒ってくれた国王とベルリアに目を向ける。
「なんか……巻き込んですみません」
「一応おめぇも俺が守るべき民の1人だからな……っかし…あのジジイむかつくな……」
「同感。あんな年の取り方はしたくないね」
国王は腕組みしてソファーにどかりと座り、ベルリアは肘をついた手に顎を乗せた。
「親父も悪かったな……これでミヤと破局ってねぇよな?」
あまり感情にまかせて行動したりしないのに、今回ばかりは腹が立ったようだ。
「息子に対して死ねと同意語を言われたら、誰だって怒るさ……それに、私とミヤはそんなに脆い絆じゃないよ」
ベルリアは気にしなくて良い、と手をヒラヒラさせる。
「んじゃ俺ぁ城に戻るわ。城の魔導師にも調べさせとく」
国王は立ち上がり部屋を出て行こうとして、立ち止まった。
「あ、アース死んだらキャラはフリーじゃねぇか……」
国王はニヤリとキャラとアースに目を向ける。
「いいぜ?コイツ死んだら嫁に行ってやるよ」
国王の言葉にキャラもニヤリと笑って答える。