黒い魔獣-23
『それでもやるか?』
「勿論!」
キャラはオーウェンの問いかけに、笑顔で答えた。
「じゃあ、私とリンは先に行って準備をしておくよ」
ベルリアは馬に跨がるとすぐさま走り出した。
「キャラ、無理はするんじゃぁねぇぞ」
オーウェンから降りた国王はキャラを心配して声をかける。
「なあ、国王……」
キャラは未だにオーウェンの足元で暴れているアースを見ながら国王に呟いた。
「オレ、今初めて召喚師で良かったって思ってる……」
だからこそ、アースを助ける事が出来る。
アースを見つめるキャラの横顔はあまりにも綺麗だった。
(つけ入る隙なんかねぇのはわかっちゃいたがな……)
国王は頭をガリガリ掻くと、その手でキャラの頭をポンと叩く。
「ま、気合い入れて行けや。ちゃんとアイツ捕まえてこいよ」
国王のその台詞はキャラを諦めた事を意味する。
「はい」
キャラは国王に顔を向け、笑顔を見せて返事をした。
『よし。行くぞ』
オーウェンはそう言うと脚をアースからどかして、その場から飛び退く。
アースは解放されると同時に体を起こして喉を鳴らして唸った。
『グルルルル』
視線はキャラ……執着されて嬉しいような、命を狙われて迷惑なような複雑な心境になる。
キャラは踵を返すとアースの家の方へと走り出した。
『グアッ!!』
すぐさまアースも後を追いかけて駆け出す。
「騎士団!援護しろ!間違っても殺すんじゃぁねぇぞ!!」
国王の指示に騎士団はキャラを援護すべく後に続く。
キャラに追いつきそうになると、騎士団から矢が飛んで来るのでアースは苛ついて陽炎を吹き出した。
「うわぁっ!」
何人かの騎士団員が陽炎に弾き飛ばされて地面に転がる。
多分、軽傷という事にしてキャラは気にせずに走り続けた。
「キャラ!こっち!」
エンの声が聞こえたかと思うと、掬い上げられるように腰を捕まえられてアビィに乗せられる。
「お待たせ〜アースの家に行けばいいんだよね?」
息が切れて返事が出来ないキャラは頷いて答えた。
キャラを目の前でさらわれたアースは必死にアビィを追いかけて来る。