黒い魔獣-22
『学長殿はどこじゃ?分離の魔法陣を使うぞ』
暴れるアースを踏みつけたまま、オーウェンは首を巡らせる。
「分離の?」
それは、ベルリアとリンが一つの体から別れるために使用した魔法陣。
「え……でも、グロウはアースなわけだし……」
『これだけハッキリ自我が芽生えておれば問題はない』
「まだ……?」
『うむ。どっちも消えずに踏ん張っておるぞ?中々の精神力じゃな』
それを聞いたキャラはヘナヘナと地面に座り込む。
「よ……かったぁ……」
ガチガチに強張った手から長剣が滑り落ち、カランと音を立てた。
今更ながら震え出した両手を握りキャラは深く息を吐く。
『馬鹿もん!!まだ、終わっとらんわ!!早く学長殿を呼んでこんか!!』
「はいっ」
オーウェンの怒号にキャラは慌てて走り出し、ベルリアを連れて来た。
「……しかし、あの魔法陣は描くのに5時間はかかるし、発動するには大量の魔力が必要ですよ」
キャラに連れられてきたベルリアはオーウェンに説明する。
『前回使用した場所なら、そこに魔法陣が染み込んでおるはずじゃ。ちぃと魔力を流してやれば魔法陣が浮かび上がるじゃろう。魔力の方は……キアルリア、お前の仕事じゃ』
「へ?」
確かに魔力を溜め込むタイプだが、そんな大魔法を使えるほどじゃない自信がある。
きょとんとしたキャラを見たオーウェンは片眉をあげた。
『こやつに聞いておらんのか?お主の魔力はお主自身のものでは無いと……』
「聞きましたけど」
理解はしていなかった……。
『簡単に言うとお主の体はあっちの世界の入口なのじゃ。今は扉が閉まっていて、隙間から少しエネルギーが漏れてる感じじゃな』
ここまでは理解したか、とオーウェンは一度話を止めてキャラを見る。
キャラは頷いて先を促した。
『その扉を開け』
「どうやって?」
『儂もそこまでは知らん。ただ、大量のエネルギーが体を通るわけじゃから、かなりの苦痛を味わう事になるじゃろうな』
オーウェンの言葉にキャラ以外の人間がゴクリと生唾を飲む。