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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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黒い魔獣-18

《どう…なっても知……らねぇぞ…!》

 グロウは最後の力を振り絞ってアースの手を強く握り返した。


 黒い毛の塊となってドッと倒れこんだアースは時折ビクリと跳ねるだけで声もあげなくなった。

「死んだかな?」

 言いづらい事をアッサリ言い放ったキャラは長剣で肩をトントン叩く。
 ベルリアとリンはキャラの物言いにムッとして目を向けた。
 そこには、態度と口調とは正反対のキャラの顔がある。

 信じている……必ずまたいつもの声で名前を呼んでくれる事を……大好きな瞳で見つめてくれる事を……その腕で…強く抱いてくれる事を……。

 瞬きもせずにアースを凝視するキャラの表情は言葉では言い表せるものではない。
 2人はキャラが自分達と同じ気持ちだと気づき、目をアースに戻す。

 その時、アースがムクリと起きてブルッと体を震わせた。
 体に張り付いていた服の残骸が飛び散り、その全貌が見える。

 全身を覆い尽くした黒い毛はベルベットのような光沢。

 揺れる長く伸びた尻尾。

 四肢を伸ばす姿は、猫科の大型肉食獣を思わせる。

 しいて言うなら豹……いや、独特な模様が無いからジャガーだろうか……しかし、それは馬ぐらいの大きさがあった。

「蛇とかナメクジじゃなくて良かったというか、猫耳が可愛いというか……」

「いや……ここは、でかすぎだろうとツッこむべきだな」

「肉球触りたいわ」

 3人は緊張感の無い話をしているが、背中には冷や汗が流れている。
 どうか自我が保たれていますように……出来る事ならこんな化物と戦いたくはない。

 しかし

『グオオアアアァァァッ!!!!!』

 アースがあげた耳がおかしくなる程の咆哮は結界をもビリビリと震わせた。
 全身から金色の陽炎が吹き出してユラユラと揺れる。
 ゆるりと振り向いた瞳には……凄まじい敵意と憎悪が感じられた。

「ダメ……ですね」

 キャラは手の平を濡らした汗を拭いて長剣を握り直す。

「魔法士は魔力を注げ!!意地でも結界を保つぞ!!」

 ベルリアは声を魔法で拡大して待機している魔法士達に指示した。
 リンは結界の魔法陣を強化するべく新たな魔法陣を作り出す。

「騎士団に住民の避難をお願いしてきます」

 キャラはベルリアに言うと、一度アースに目をやり振り切るように走り出した。


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