今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT3>-12
「シケた顔してるのねー。そういう時はパァーっと飲んで忘れるってどうよ?」
何も話せず飲むことに費やした。それに業を煮やしたのは樹里さんだった。
空になったカップを掲げ、どこかで一杯やろうと提案する。
逃げ出さず、前を向いて歩きなさい、そう言っているようだ。
手を離したのは、核心を突いたのは俺なのに。
女って強い。
まだ情けない俺は、一生適いそうにもないが。その勇気が欲しいと思う。純粋に、その強さに憧れるんだ。
「いいよ、椿さんもくるだろ?」
椿さんは静かに頷いて、小雨が降っているから近場にしよう、とそっと囁く。
見やれば窓には細かい雨粒が幾つも重なっていた。
雪から雨へ、俺の心も溶けていくみたいだった。
小雨だからと近くの小さなバーに掛け行った。
七星とは全く違う、穏やかな空気と常連ばかりの店内に少し緊張もしたけれど。結局アルコールが入れば俺はどうでもよくなり、この気まずさを埋めるようにグラスを空けた。
全員分を奢るほど財布に入っていないが、自分の分くらいなら何とかなるだろう。情けなさに拍車がかかる。
変に悪酔いしたか、ビールから飲み始めてワインを空ける頃には呂律も思考も鈍くなってきたのを自覚する。酒には強い方だと自負していたのに。
それは樹里さんも同じようで。
なにか気持ちに変化があったのかは分からないが、いつもより陽気に俺に絡んできた。
「ね、ユースケぇ。あたしってまだまだいけるほぉだよねぇ」
「ぜんぜんっすよ、ちょぉいい女じゃないっすかぁ。何度だっていけるしぃ」
笑いは止まらず、くだらない冗談が妙にツボで。
椿さんはそんな俺らを困った顔で、だけど笑って楽しんでいる。
「ユースケはぁ、やりすぎぃーなのよぉ?セックス依存?あ、某ゴルファーみたいに泥沼になったらぁ、あたしもマスコミに証言しちゃったりぃ?」
くふふ、と愉快そうに笑って。そんな様子が吹っ切れた何かを友情で繋ぎ止めているような気がして。
ぼんやりとした思考で、友情もいいかもしれない、なんて。