トランプ!-1
空に広がる黒い雲・・。
いつも通りかと思われたその日、
人々は、特別な事が起こりそうな・・そんな予感がしていた
市街地の中心・・噴水の前に勢い良く止まった一台のバイク。
そのバイクから降りてくる二人の若者・・。
一人は男の子。
ゴーグルを付けたピョンピョン髪、丈の短いデニムのジャケットに黒のTシャツ。
迷彩柄のカーゴパンツが、幼さを残すあどけない表情の彼に更に若さを感じさせた。
その彼に続いてバイクから降りるのは女の子。
サラサラの髪に二房だけ伸びた髪が風になびく。紫のインナーに、白の肩出し長袖パーカー。デニムの短パンと黒のロングブーツの組み合わせで実年齢より遥かに大人びた印象を与える。
「ん〜!!いい天気だな!」
「・・この黒い雲に覆われた空を観て言ってるの?それ」
見かけ通りの言葉使い。
伸びをしながら元気な声を出したのは、少年―セナ
その彼の声に呆れたのは、少女―ナイン
彼女達は、ある目的があってバイクを噴水まで走らせた。
「何だよー、朝早かったからそんなに機嫌悪いのかー?」
「そんな訳ないでしょ!アンタが飛ばしすぎるの!」
「えー、試合の時あれくらいじゃん」
「それを実用化しないでくれる?」
「しょうがないだろー。遅刻したらアチラさん、怒って帰っちゃうかもしんねーし」
「アンタじゃないんだから・・」
淡々と、会話(痴話喧嘩?)を続ける二人に視線が集められる。
その視線の意味は色々。
「微笑ましいね〜」や、「こんなところでイチャイチャしてんなよ」、「うるさい」も含まれるが、ほとんどが期待に満ちた眼差しだった。
「ふーん、やっぱ視線すげーなぁ」
「そりゃあね。この世界とデュアルを支配してしまった闇騎士軍に挑むのは私達しか居ないんだから」
そう、この二人はスポーツ化された『デュアル』の実力派チーム。
様々な大会で優勝を収めている。
残すは、世界大会だけとなったが、その時に支配足りなかったということで、
闇騎士軍に大会を支配されてしまった。
闇騎士軍の狙いは果実。
二人の目的も果実。
そして、軍のトップが、「つまらないから、ゲームをしよう」と言い出し、
チーム一つだけが軍のチームと戦える権利が貰えた。
勿論、軍が負ければ、この世界の支配はなくなる。
だが、自分達が負けると永遠に混沌の世界に渦巻くことになる。
そこで、名乗りを挙げたのがナインとセナのチーム「トランプ」
二人しかいないチームだが、その実力は確かなモノとして、
人々の期待を背負っている。
実は、この日。
その世界をかけたデュアルが始められる日だった・・。