トランプ!-3
「じゃあルールはこれで決まりだね。審判はそっちの人間でいいよ」
「分かったわ。」
ナインは、後ろを振り返るとセナに目で審判を探すように頼んだ。
その視線の頼みを理解したセナは、その場を離れることに抵抗を感じながらも走り出した。
「ところで、どこで戦うつもり?」
「ん?決まっているじゃない」
怪訝そうな顔で聞いたナインに先程の不気味な笑みを浮かべて答えた。
「ここ・・市街地全域だよ」
「・・・・!!な・・!」
両手を広げて言う青年に、ナインは今までにない寒気を感じた。
「ちょっと待って!ここは人が大勢住んでる!危険すぎる!」
「だからいいんじゃないか」
「なんですって・・!」
「危険なら避難させればいい。これはただのゲームじゃないんだよ。
命をかけたゲームなんだ。死ぬも生きるも、自分の選択次第」
青年から語られる言葉に、ぞっとする。
そして、ナインは理解する。
“こいつは、人を何とも思ってない”と・・。
だが、従うしか出来ない自分がいる。
なんと情けないのだろう、そう心中で思い知らされた。
「・・・分かった。必ず避難させる。」
「やっぱりキミは理解が早くて助かるよ。」
「理解したわけじゃない。そこ間違えないでくれる?」
「そう。ま、いいけど。そうそう、そんな君にご褒美ってことで、
中継もしておいてあげるよ。」
「中継?」
不釣合いな言葉が出てきた為、思わず聞き返してしまう。
青年は、不気味な笑みをそのままに答える。
「そう。人々はデュアルを好んでいる。この命懸けのデュアルもね。
だからその人々に見せてあげるんだよ」
「・・・そう。巻き込まないなら、別に構わないけど・・。」
そこまで言ったナインは、ケータイを取り出した。
勿論、かける相手はセナ。
「セナ?悪いんだけど、人々を避難させてもらって。」
電話で次々と指示をしていくナインの背中を見つめながら、青年は不気味な笑みを更に深いものにさせた・・。
「さぁ・・命をかけたゲームのはじまりだ・・」