ナオキ・28歳の場合-8
「じゃあ、行ってきます」
「おう、気をつけてな」
「はい!」
ナオキは、外回りのためにオフィスを出た。
季節は移り変わり、すっかり肌寒くなっていた。
ナオキはコートの前をしっかり閉じて外に出た。
ー木枯らしが、ナオキを襲う。
ー・・・亜佐美・・・
どこに行けば、お前に逢えるんだ・・・?
外回りをしていても、つい亜佐美に似た女性を見ると反応してしまう。
もう、いい加減諦めたら楽になれるのに。
そう思っていても、ふとした瞬間につい亜佐美を思い出してしまう・・・。
ある時から、ナオキは諦めるのを諦めた。
ずっと、亜佐美を想いながら生きていこうー・・・。
亜佐美は、自分の何倍もの時間を辛い思いをして生きてきたに違いないのだから。
亜佐美の初めてを無理やり奪った自分。
どうして、亜佐美がナオキに抱かれに来たのか、その真意は定かではないが・・・。
亜佐美に会うことが出来たら、まずは謝って・・・・それから・・・。
もう、後悔はしたくない。
ナオキは時計を見た。
面会の約束の時間まで、まだ少し時間があった。
余裕をもって、早く出過ぎたな・・・。
ちょうど、昔ながらのコーヒーショップが目に入った。
少し、温まっていこう。
ナオキはコーヒーショップのドアを開けた。
ー・・・フワリ、と花の香りが鼻をついた。
・・・・どこかで、嗅いだことがある・・・?
「いらっしゃませ」と、店員の声。
ドクン、ドクンと胸が高鳴る。
店員が、振り向いたー・・・。