ナオキ・28歳の場合-6
それからー・・・どのくらい時間が経ったのだろう。
ナオキは、けだるく重いカラダを起こし、辺りを見回した。
何だか、女を夢中になって抱いていた夢を見たような・・・・。
部屋の中はカーテンが引いてあり、薄暗かったがさっきのビジネスホテルの中だと気が付くのにそう時間はかからなかった。
しかし、女の姿はどこを探しても見当たらない。
ベッドを探るとじっとりと湿っていて、さっきの行為は夢じゃなかったんだと思い知らされる。
時計を見ると、もうすでに12時を回っていた。
「・・・っ!会社っ・・・!」
携帯を開いて、今日が休日だったということに気が付いて胸をなでおろす。
しかし・・・。
昨日の女は、誰だったんだろう・・・。
気を失う前に記憶の中に蘇った、あの女学生はなんなんだ・・・?
わからない・・・・。
悶々と考え込んでいると、ふとテーブルの上に白い紙がきれいに折りたたまれて置いてあるのに気が付いた。
ナオキはそれを手に取って開いていく。
そこには、真面目な性格を表しているかのような几帳面な整った字で、こう書かれていた。
『思い出してくれなくても、抱いてくれて嬉しかった。ありがとう、さようなら 山岡 亜佐美』
・・・・山岡 亜佐美・・・!?
とたんに、ナオキの記憶が滝のように脳内に流れ込んだ。
山岡 亜佐美は高校時代のクラスメイトだ。
地味で、黒髪をいつも三つ編みにして教室の隅っこで静かに本を読んでいるような女生徒だった。
ほとんど誰も山岡 亜佐美に目もくれなかったが、ナオキは密かに隠れた亜佐美の美貌に気が付いていた。
夕暮れの、教室で。
放課後残って本を読んでいた亜佐美にナオキは話しかける。
「なんで残ってんの?何の本いつも読んでるの?」
普段、あまり話したこともないナオキが親しげに話しかけたものだから
亜佐美は最初驚いていたようだったが少し嬉しそうにほほ笑んだ。
幼い、若さゆえの、愚かな行為。
亜佐美の、初めて見せた微笑みにナオキは突き上げるような欲望を感じた。