罠-7
「……藤本……欲しいか……」
「……欲しい……です……」
無意識のうちにそう答えていた。
誰が欲しいのか……何がしたいのか……自分でもわからなくなっていた。
川瀬はあいりをひざまづかせると乱暴な手つきで髪を掴み、己の股間を前に突き出した。
あいりは何かに取り付かれたように川瀬のベルトを緩め、スラックスと下着を引きずり下ろす。
三田村のモノよりも太く赤黒い淫棒を握りながら、あいりはゆっくりと唇を開いた。
かつてあれほどまでに嫌悪していたこの男の歪んだ欲望の象徴を、あいりは今まさに自らの意思で口淫しようとしているのだ。
舌を突き出し、えらの張った亀頭を喉の奥へ押し込むように、大きく口を開いて幹をくわえ込む。
そして唇に軽く力を入れてゆっくりと引き抜きながら、舌を裏側の筋に沿って激しく擦りつけた。
青臭さと尿が混じったような不快な臭いが、あいりをなんともいえない惨めな気分にさせる。
それを振り切るかのように、あいりは無心でその肉棒を貪り続けた。
激しい音を立てられないぶん、自ずから舌使いがいつもより濃厚になる。
血管の浮き出た川瀬自身の形を確かめるように、あいりはその付け根から先端まで隈なく舌を這わせていった。
時折什器越しに漏れ聞こえてくる三田村の呻き声が、あいりを恍惚とした錯覚へと導く。
自分が誰のモノを欲し、誰のモノを愛撫しているのか、あいりの頭はひどく混乱してしまっている。
己の欲情の全てをぶつけるようなあいりの激しい口淫に、川瀬も腰を動かす余裕さえ失っていた。
「……よし……そろそろくれてやろう……」
川瀬はあいりを抱きかかえるようにして立ち上がらせ、前の什器に手をつかせた。
あいりの目の高さからは三田村と理可の絡み合う姿が嫌でも目に入って来る。
ソファーの上では、仰向けに寝転んだ三田村が、その顔面に馬乗りになっている理可の股間を下から舐め上げているところだった。
「……見ろよ…あの格好……」
川瀬が面白そうに言いながらあいりのヴァギナにペニスの先端を擦りつける。
その生暖かい感触が目の前の三田村の舌の動きと生々しくシンクロし、膣口に痺れるような快感が走った。
理可は三田村の顔面に愛液をなすりつけるように、くびれたウエストを卑猥に前後に動かしている。
息苦しいのか、時折眉を潜めて荒い息を吐く三田村の横顔が異様に美しく見えた。
「……そろそろ…欲しいころだろう……」
川瀬が囁くように言いながら、背後から屹立したモノをゆっくりと突き入れてきた。
「……ああっ……」
こらえきれずに声が漏れてしまう。
切実に、全身がわななくほど「オス」を欲していたあいりの身体は、川瀬の肉杭を喜々として受け入れた。
川瀬はあいりの尻に下腹部をグラインドさせながらこすりつけてくる。
興奮で充血した胎内が、川瀬の亀頭に押し広げられていくのがはっきりと感じ取れた。
「……今日はキツいな……」
明らかにいつもより高まっているあいりの身体に気付き、川瀬はゆっくりと焦らすように腰を進めながら揶愉するような口調でこう言った。
「好きな男を寝とられて興奮するとは……お前は相当の変態だな……」
誰にも気付かれないようにしていたつもりの三田村への気持ちを思いがけず川瀬に指摘され、あいりは激しく動揺した。
「……ち…ちが……」
「それを見ながら俺に犯される気分はどうだ……」
ソファーの上では今まさに理可が騎乗位で三田村を受け入れようとしているところだった。
挿入の瞬間、二人の口からため息にも似た喘ぎ声が漏れる。
川瀬は二人に対抗するように、背後から激しくあいりを突き始めた。
いつものようなあいりのツボだけを的確に攻め立てる動きではなく、その肉体の最奥を探り当てようとするような強烈なストロークに、あいりは激しい痛みと新たな快感を感じていた。