陥落-3
「……あっ……ハアッ…しゅ…主任っ…イヤ…」
しかし今日の川瀬はなぜか乳房全体を緩く揉むだけで、硬くなった乳首には一切触れてこない。
下半身をまさぐる指先も、一番疼いている部分だけをあえて避けるように、じれったい愛撫を続けている。
いつもの川瀬ならあっという間にあいりの肉体をコントロールし、いとも簡単に絶頂へと導いてしまうのに……。
「……ん…はぁんっ……」
いつもとは違うもどかしいような感覚に、あいりは少し焦れたように身をよじった。
『どうして……今日はすぐに触らないの……』
あいりの身体はすでに全身性感帯のように敏感になってしまっていた。
子宮の奥が激しく疼いている。
気持ちとは関係なく、あいりの肉体に潜む淫魔が、絶頂に導かれることを欲して暴走しようとしていた。
「……う…ううん……」
気がつけば、思わず催促するようなはしたない声が漏れていた。
『……もぅ…早く…シて……』
熱を帯びたような視線で上目遣いに見上げると、川瀬は意外にも突き放すような視線であいりを見下ろしていた。
そして冷ややかな声でこう言った。
「―――支配人室で何をしていた?」
突然の詰問に、あいりはハッとして身をかたくした。
一時間ほど前、あいりは中森から「重要な話がある」と言われて、支配人室に呼びだされていたのだ。
あの悪夢のような新入社員歓迎会以来、初めてのことだった。
歓迎会であいりにほとんど強姦まがいのセクハラを行った中森と密室で二人きりになることがどれほど危険なことか、あいり自身にもよくわかっていた。
それでも新入社員であるあいりが店舗の最高責任者である中森に逆らうことはどうしてもできなかった。
入社まもない上に、ほかの女子社員から疎まれているあいりには、こういう時に相談することの出来る先輩社員が誰もいない。
どうしていいかわからないまま、結局あいりは中森の呼び出しに応じてしまったのだ。