「超合体浪花ロボ・ツウテンカイザー」-7
ヤドカリエイリアンが消滅した直後、その他のエイリアンの動きは停止した。火星人の襲来も一時的に無くなり、生き残った人々は移民ドームの再建を始めた。
ツウテンカイザーも、オリュンポス山にあるテラフォーミング観測基地に収容され、ひよこも恭子も当分はそこで暮らすこととなった。
「取り残されたエイリアンの知能はせいぜい昆虫並で、それがなんで的確に人類の施設を強襲する事ができたんか、まるで分からん。あのヤドカリみたいなゴッツイのが司令塔やったとしても、浮上した古代火星文明を造ったんはもっと高度な知能を持った知的生命体の筈や…。そいつらは一体何処へ??」
オリュンポス基地の司令室で、赤い火星の大地を眺めながら十文字博士は呟いた。そこへ、血相を抱えた恭子が飛び込んでくる。
「博士、ツウテンカイザーを降りられないって、どういう事ですか!?」
振り返る十文字博士。恭子の後ろから、送れてやってきたひよこが呑気な顔を出す。
「あ、ああ、恭子ちゃん。それがやな、一度生体情報を登録されたパイロットは一ヶ月の間は登録を抹消できへんのや。簡単に言うとな、パイロットの情報を削除するとツウテンカイザーの戦闘プログラムも初期化されてしまうんや。別に普段やったらそんなもん初期化してもどうって事ないんやけど、今回火星人とまともに戦ったんはツウテンカイザーだけやし、しばらくは我慢してえな。まあ、火星人もしばらくは攻めてこえへんやろうし、出撃することも無いって…」
十文字博士の言葉に、不承不承納得する恭子。そこへ、ツウテンカイザーを降りる気などさらさら無いひよこが口を挟む。
「まあ、うちは別にツウテンカイザーのパイロットやってもええんやけどな。まだ、あれ使うてへんし…」
ひよこの意味ありげな言葉に、怪訝な顔をする恭子と十文字博士。
「…あれって?」
「あれ、ちゅうんは、ほれ、ロケットパンチたらなんたらいうやつや。スパイラルナックルたら、ブーストナックルたら、色々あるやろ?ロボットアニメの王道やんか。名前はやっぱりツウテンナックルとか、その辺かいなぁ…」
「ふむ、ツウテンカイザーのそのシステムはツウテンパンチで登録されている筈やけど…」
十文字博士の言葉に、ひよこが露骨に嫌な顔を見せる。
「ツウテンパンチって…。もう少しひねって名前を付けてほしいわ。他にもブロウクンマグナムとかファントムとか、色々格好ええんがあるやろに…」
「阿呆言いな!ツウテンパンチでええやないか!パンチはパンチやろが!!大体、マグナムとかファントムとか、それはボクシング漫画のパクリやろが!!」
「べ、別にボクシングでも何でも格好ええんは格好ええんやし、ええやないのぉっ!!それにうちは、ナックルにしよって言うてんのや!今からでもええからツウテンナックルに変えよ!!」
「阿呆言えっ!!」
十文字親子の会話に、呆れて溜め息をつく恭子。
「はあ、…なんだか私、とんでもない泥沼にはまり込んでいるんじゃあ…」
「ツウテンナックルやっ!!お父ちゃん、センスないなぁ!!!」
「阿呆っ!!パンチはパンチやぁっ!!!」
了。