非線型蒲公英-4
「あ、あはははははははは…」
ヤヴァイ。気付いてはいけない事に気付いてしまった。
「…どうしたんですか、気味が悪いですよ」
「か、買い物終わってから、こんな事言うのは気が引けるんだけど…」
「…なんですか」
「家が無いじゃん、俺」
「…あ」
「どうしましょう」
「…どうしましょうね」
「あああああ、折角の手料理がぁあああ」
「…はぁ、私の部屋、来ますか」
「あああ、ってぇぇぇぇえええええ!!!」
「…騒がしいですよ、先輩」
「だだだだだって、ひよちゃんアパート暮らしでしょ?」
「…はい」
「一人暮らしの女の子の部屋に行くということはそれはもうあんなことやこんなことが色々と…(妄想)…ブハッ!!!」
「…」←冷たい視線。
「はっ、いや、今のは何でもないよ? 妃依クン」
中指で、ありもしない眼鏡のブリッジをくいっと持ち上げるふりをした。
「…まぁ、先輩のそれは今に始まったことじゃないですからね」
「うぅ、超越してるなぁ、ひよちゃん」
「…うちの先輩達と関わってれば、慣れもしますよ」
「あー、俺もその中に含まれてる?」
「…さあ、どうでしょうか」
「含まれてますよと、顔が笑ってる…」
その二人の後をつける、三つの影。
当然二つは香奈と美咲の物だった。が、もうひとつは…。
「司君、司君。そんなに前に出たら見つかっちゃうよ」
「でも、センパイ。宍戸が遊佐間先輩とデキてたなんて、これはかなり僕としては興味があるんですけど」
妃依とは同級の須藤司が言った。彼はここに来るまでに二人に見つかり、連れてこられたのであった。
「なんで? ひよりん取られたら困る?」
「いえ、そうじゃないですけど」
「ふむ、では、やはり遊佐間か…」
「な、何でそうなるんですか」
「前々から、お前の遊佐間を見る目は只事ではないな、とは思っていたのだ。やはりそうだったか」
「センパイの見る目の方が怖いですよ、それ…」
「もー、美咲ちゃんは誰でもくっ付けたがるんだからー」
「シチュエーションは多い方が良いと思うのだが」
「それはそうだけどー、厳選された素材にこそ、魅力があるというか、萌えがあるというか…ねぇ、司君?」
「え、僕はそういう方向の話は、ちょっと…」
「だが、常識的な男子は皆、男好きなのだろう?」
「ど、どういう常識なんですか、それは」
と、不毛な会話をしつつ、今度は見失わないように後をつける三人であった。