非線型蒲公英-25
本日の部活動はとりあえず、猛が持参した麻雀ということになった。が、人数が多かったので、悠樹考案の『変則六面打ち』とやらを実行してみた。牌が足りない上に麻雀を知らない奴が2人(ひよちゃんと沙華ちゃん)いたので一局でやめた。
基本的に、うちの部はボードゲームかカードゲームをやって時間を潰すという非活動的な部活(矛盾している)なので、やる事が無いと、とことん、やる事が無い。
ちなみに部費は全て、たまに顔を出すうちの姉さんが(元部長なのだ)奪い去っていく。誰も文句は言えない。姉さんに逆らえる奴は恐らく悠樹くらいだ。
話は戻り、麻雀のあとで始めた人生ゲームで、皆の集中攻撃により俺が破産して『やってられるか!!』と心中で叫び『ボードをひっくり返してやろうか…ククク そうしたら、俺から2億円近く奪っていった、ひよちゃんが投資した株も何もかもパァだ!! フハハ!!』と、絶対に実行は出来ない事を沸々と妄想し、俺は少し切なくなってポツリと口にした。
「今日、誰か泊めてくれないかなぁ…」
一瞬、皆の手がぴたりと止まる。
「誰か、泊めてくれないかなぁ…」
「…今日もアテが無いんですか」
ひよちゃんの回したルーレット型サイコロが、カラカラ…と、安っぽい音を立てて止まる。
「泊めてくれないかな…」
しつこいくらいに言ってみた。やる事が無いので邪魔をしてやろうと思っているわけではない。多分。
「だから、私の家に来ればいいのに…」
悠樹が言う、が、
「却下、他の誰か…」
「お兄ちゃん、どうして外泊なんてしようとしてるの?」
「あー、うん、困った事に家が無くなって…」
「え? 無いって…どうして?」
「爆発したから」
その一言に、沙華ちゃんと燐ちゃん(あと、猛も)が驚いたような表情を作る。
「…もしかして、ニュースでやってた4丁目で起きた謎の爆発事故って…」
「遊佐間先輩のお宅…なのですか?」
「そうだよ…」
「あれぇ? みんな知らなかったの?」
「…そういえば、話してませんでしたね」
確かに、まともに説明したのはひよちゃんとあいつら(香奈達)にだけだ、悠樹は…近所だから説明するまでも無く知ってる。
「ゆ、遊佐間…!! 一体どんな陰謀に巻き込まれたんじゃ?!」
「さあな…」
母さんがパソコンに触ったから爆発したとは言いたくない。いや、陰謀といえば、これも姉さんが関わっていたのかもしれないが…。
「と、泊まる所が無いなら、ウチに来なよ、お兄ちゃん…」
心配そうに沙華ちゃんが言ってくる。ふと、そこで思い出す。
「あ…そういや、沙華ちゃん、和馬が倒れたって聞いた?」
「え? うん、意識は取り戻したけど、今日は絶対安静なんだって、別に心配はしてないけど」
「あ、そうなのか…早かったな、意識が戻るの」
まあ、口に含んだだけだったからだろう。俺の時は胃まで入ってしまったからな。
「じゃあ、雫さん、看病で家に居ないんじゃないか?」
「うん、居ないけど、別に構わないよ? お兄ちゃんの分くらいならご飯作れるし」
「…」
何故だろう、本能が、快く『行きたい』と言うのをためらっている。横から凄い冷たい視線が飛んできているからだろうか…。冷や汗が出るほどのプレッシャーだ。
「…私も行っていいかな、沙華ちゃん」
静かに挙手してそう告げるひよちゃん。
「え? いいけど…どうして?」
それは是非、俺も聞きたい。
「…え…と、明日は休みだし、一人暮らしだとすることが無いから」
微妙に説明になっていない気がする…。
「? まあ、人数が多い方が楽しいからね!! あ、燐ちゃんも来ない?」
「え…わたくし…ですか?」
「前に『泊まりに行きたい』って言ってたでしょ? 折角だし、今日来ない?」
「でも…ご迷惑じゃ…」
「いいの、いいの!! 留守を預かってるのは私なんだから、好きにやらせてもらうわ!!」
「でしたら…是非、お邪魔させていただきます」
「あ〜、だったら私も行きたいな」
「いいですよ!! 部長もいらしてください!!」
わいわいきゃあきゃあ、と、女の子達がはしゃいでいるのを横目に、俺は内心焦っていた。
『こんな中に俺一人だけ男ってのは無理っす…気まずくてココロが壊れる…』
俺はとっさに猛の肩を掴んだ。