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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-17

「うーん、そうだな…美咲達が喜びそうな写真か…」
「え…美咲さん達に依頼されたのかい? 一応言っておくけど、脱ぐのだけは勘弁して欲しいな」
「そんなグロいもん俺がお断りだ」
 確かに美咲達なら喜びそうだが。
「あー、やはりここは定番の『水際で戯れる』シチュエーションでいこう」
「って、具体的にはどうするんだい?」
 嫌がっていたわりにはやけに協力的な姿勢だ。
「ほら、よくある不自然な『アハハ、ウフフ』な笑みを浮かべての水の掛け合いだ」
「僕、一人なんだけどな」
「は? その辺の誰かに掛ければOKだろ。ほら、あれにやれ」
 と、俺が指差したのは同じのクラスの高沢だ。
「わ、わかったよ…あ、アハハウフフ!!」
 明らかな不審者が、高沢に水しぶきを掛ける。やらせておいてなんだが、あれではただのイタい人だと思う。
「うわ、何すんだよー、笹倉」
 高沢が抗議の声を上げる。俺はシャッターを切る。
「アハハウフフアハハ!!」
 さらにバシャバシャと水を掛ける和馬。ちゃんと言ったとおり不自然に笑っているのが、余計に怪しい。
「だ、大丈夫かー、笹倉、狂ったのかー?」
 高沢が顔をしかめる。これでは駄目だな、掛けられている方も不自然な笑みを浮かべないと。
「おい、高沢、ちょっと笑え」
 俺がそう指示を出すと、高沢はさらに顔をしかめた。
「お前ら、わけわかんねーよ」
「いいから笑っとけ、ブイぶつけるぞ」
 バレーボール大のブイを片手で構える。
「わ、笑えばいいんだろー、うひょひょ」
 こいつの笑い方はなんだか見苦しい。だが、これも報酬(下心)のためだ。我慢しよう。
「アハハウフフ」
 バシャバシャ。
「うひょひょ」
 ザバザバ。
 非常にウザイ。それを撮ってる俺も俺だが。
「…こんだけ撮ればもういいか」
 さっさと退散する。不自然に楽しげな二人は放って置いて。
「アハハ」
「うひょ」
 それから彼らは授業終了まで戯れていた。


 俺が美咲達のところに戻ると、厄介な奴が増えていた。
「あ、聡君! 写真見せてー!」
 何故、悠樹が写真の事を知っている…。
「クク…遊佐間、なかなかいい見ものだったぞ」
「物を使って無理やり言う事を聞かそうだなんてー、Sの血の目覚め?」
「お前ら見てたのかよ…まぁいいや、ほら、カメラ」
 どうせ借り物なので、やんわりと投げてやる。真似してはいけない。
「わぁ、ちょっとー! 投げないでよー」
 言いつつも、早速確認を始めている。
「えー! かずくんの写真しかないよー!? しかも水かけてるだけだしー」
「ああ、物足りなさのあまり激怒したい気分だな」
「仕方ないだろ、満足してくれ」
「あ、これ高沢君だ! アハハハ、ぶよっとしてる!!」
 悠樹よ、それは言ってやるな…。彼に失礼だ。
「これじゃあ、撮られてあげるのは無理だなー」
「そうだな、この程度では私の柔肌は晒せないな」
「くそ、結構自分に無理したのに…」
「ねえねえ、だったら私が撮られてあげるよ?」
「いい、いらない」
 きっぱり断る。今更悠樹なんか撮っても楽しくない。
「えー、撮ってよう」
「なら脱げ」
「えー…」
 これには流石の悠樹も眉をひそめた。が、
「わかった…脱ぐ」
 と、水着の肩紐に手を掛けた時にはかなり焦った。
「まままままてぇ!! 脱ぐな!! よせ!!」
「だって…脱いだら撮ってくれるんでしょ?」
 ちょっと泣きそうな目で言いやがった。そ、そんな目したって、俺は揺らがないぞ…?
「脱いだって撮ってなんかやらん」
「うー…っ…」
 小さく唸ると、後ろを向いてしまった。回り込むようにして悠樹と向き合った香奈が、悠樹の頭を撫でてやっている。
「あーあ、泣ーかしたー、さとっちひどーい」
 香奈がやたら抑揚をつけた言い方で非難してきた。
「最低、だな。女子供を泣かして、ポイ捨てとは」
 何だよ、まるで俺が悪者みたいな言い方しやがって…。
「…っうぅ…」
 あぁ、肩を震わせるほど泣きやがって…駄目だ…こいつに泣かれるのには、昔から弱い。
「はぁ…分かったから泣くなよ。撮ってやるから」
「…っぅう…ほんと?」
「ただし、後でな」
「うん!」
 こいつの精神年齢は一体、いくつなんだか…。


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