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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-11

 零時二十分。
「…足が、げ、限界です…先輩…」
「…すぅ…」
「うわ…ほ、ほんとに寝てるし…」
 予告通り、司と香奈と美咲は立って寝ていた。とはいえ司だけはまだ眠れていなかったが。
『…なにも、立ったまま寝なくても』
 と、寝る前に妃依は言っていたが、
『いや、慣れているから気にするな』
 美咲がそう言うと、妃依は『…じゃあ、お好きに』とさっさと寝てしまったのだった。
 司は布団を敷いて寝ている聡を羨ましそうに見つめた。
「襲うのか…」
「うわぁ!! 起きてたんですか!?」
 夜中なので小声で驚く(?)。
「…んん…くぅ…」
「…って、寝言…?」
 立ったままではあるが、ちゃんと寝ていた。どうやら寝言らしい。
(立ったまま寝てるのに、この人達どうやってバランスとってるんだろう…)
 このままではいつまでたっても寝れやしないので、彼は部屋の隅に移動し、壁に寄りかかるようにして寝ることにした。
(あ、これなら、寝れるかも…)
 司の意識はだんだんと、眠気に包まれていった…。


(…なんだろ、いい匂い…)
 司は妙にふかふかとした感じに包まれていた。
(…夢かな…)
 試しに手を伸ばしてみる。ふかふかよりもやわらかい物に触れた。
 ゴシャ!!
 やわらかい物に触れたとたん、いきなり側頭部に強い衝撃を受けた。
「だ、なな、何!?」
 衝撃のおかげで意識がはっきりとしてくる。そして驚愕し、戦慄した。
「…おはよう、いい、ご挨拶、ね」
 目の前に妃依がいた。それを確認した時点で司は、自分の血液がすーっと引いていく音を聞いた。
(やばい、僕は死んだ)
「…何で、私の、ベッドで、寝てるの、司クン」
 目を合わせたら殺される。司の本能はそう言っていた。直視できない程の殺意のオーラが出ている。
「ちちち、ちが、僕は何も知らない…やってない!!」
「…いきなり、胸、触った、でしょ」
 そう言われて、司はまだ右手に残る感触を思い出し、絶望した。
「あああああああれは、ちがちがちが、違う」
「…いつまで、添い寝してる、つもりなの」
「わぁぁぁぁ!! すいません!!」
 慌ててベッドから飛び起きる。降りて、気が付いた。昨日、寝る直前に寄りかかっていた壁際には妃依のベッドがあり、どうやら壁伝いにずるずるとベッドに落ちてしまったらしい。しかし、それが分かったからといって、何の問題解決にもならなかったが。
「…言い訳は」
 底冷えのする声で聞いてくる妃依。
「あああ、その、不可抗力で…」
「…さよなら」
 司の意識は次の瞬間途絶えた。


「ふあぁ、あー、朝か…」
 聡が目覚めたのは、七時八分。まだ誰も起きてないようだ。
「なんだ、俺が一番かよ…二度寝するかな…」
 と、他の四人を見渡し、一人、とんでもない格好で寝ている人物を発見する。
「な、何じゃこりゃ…」
 その人物は、壁際で逆立ちの状態になり、首がかなり危うい角度で曲がり、各関節があり得ない方向を向いていた。司の成れの果てだった。
「一体、何だこれは…おい、生きてるのか、死んでるのか!」
 流石に眠気が飛び、司の生死を確認しようと彼を横たえ、頬をたたく。
「…死…」
 微かに呟くのが聞こえた。まるで死体のようだが、ともかく生きてはいるらしい。
「ひよちゃんだろうな…これは…」
 恐らく、何かしらの理由で妃依の一撃を受けたに違いない。哀れだ。
「お、俺は何も見なかった、よし寝よう…」
 関わり合いになるのは避けるべきだ。理由は不明だが、関わって自分がああならないとも限らない。
「強く生きろ…」
 聡は布団に潜り、少し震えながら目をつむった。


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