春の光〜佐藤〜-8
今日はほとんど話せてない。
会議の前に少しだけ話をした。
でも、困った顔しか見れなかった。
あの春の陽射しみたいに柔らかい笑顔は見れなかった。
困らせたかったわけじゃない。
ただ、笑ってほしい。
十時先輩にはやんわりと牽制されて、
香月先輩からはガードされてる。
仕方ないと思ってる。
土曜日に自転車で一緒にいた人が今の由梨さんを支えていると思う。
だから自分にはチャンスがないとも思ってる。
あの春の陽射しの笑顔は多分あの自転車の男の人に向けられる。
雰囲気でわかった。
由梨さんの雰囲気は日頃から柔らかい。
でもあんなに柔らかく笑って、守られているように見える由梨さんは初めて見た。
俺があの笑顔にしたいのに、困らせることしかできない。
わかってる。
だから、あの笑顔で話しかけてほしい。
引き返せるのであれば…
でも、言ってしまったから。
なかったことにはできない。
香月先輩からも言われた。
十分わかってる。
諦める覚悟はしてる。
だから、由梨さんの口から聞くまでは想っていたい…