春の光〜佐藤〜-4
「今年度も頑張りましょう、新入社員にカンパーイ!」
課長の声に、周りの人と乾杯する。どさくさに紛れてユリさんとも乾杯をする。
指が細くて華奢で綺麗で…
半年前よりずっと身近に感じる。
ただ目を疑ったのは、その飲みっぷり。
一気にグラスが空いた。
俺が注ごうと瓶に手を伸ばすと、それより先に十時先輩が瓶を取りユリさんのグラスに注ぐ。
香月先輩がユリさんに今日の残業の経緯を聞いている間におつまみを食べながらそれが何度か繰り返され、あっという間に1本が空いた。
そして、初めてユリさんと目が合う。
「あれ?新人くん?」
ユリさんが聞いてきた。
「今日から営業1課に配属になりました佐藤淳司です。よろしくおねがいします!」
ドキドキしながら言う。
今日1番の緊張だ。
隣で香月さんが突っ込む。
「由梨、あんた気づくの遅過ぎでしょう。お酒と食べ物に夢中だったんでしょ!」
ユリさんが笑いながら言う。
「もう、その通りでごめんね。遅くなっちゃって…1課なら、十時くんに色々教えてもらえるね!」
すると隣から十時先輩が俺のグラスに注ぎながら言った。
「おう?佐藤、覚悟しとけよー!因みに冴木は怖いぞー。騙されるなよ!」
「ちょっと十時くん!何てこと言うのよ!」
ユリさんが言うと、隣からさらに1課の先輩が入ってくる。
「そう、冴木さんに逆らったら大変だから、気をつけなよ!」
みんなが笑いながらユリさんをからかう。
ユリさんの頬が膨れる。
年上の先輩だけど、ホントに可愛いと思う。
秋、内定式の懇談会で話したときも思った。
綺麗なお姉さんだけど、それより雰囲気が可愛いくて、なんとなく気になる。
やっぱり俺のことは覚えてないかも。
話したのは少しだし。
話を切り出そうとしたき、後ろから話しかけられた。
結局1課の先輩と話し込んでしまい、ユリさんとは全く話せないまま懇親会は終わってしまった。