春の光〜佐藤〜-3
香月先輩が"ユリ"と言うので、どうやら女性らしい。
というと、あの時見た残業の人だろうと予想はついた。
しかし、この2人の"ユリ"先輩の話といったら面白い。
どうやら"ユリ"先輩は仕事はバリバリできるくせに、プライベートはかなり抜けているとのこと。
最初に会ったときは、結構綺麗で落ち着いた、柔らかい雰囲気に見えるけど、蓋を開ければおっちょこちょいの明るいマイペースらしい。
その話を聞いてると、何となく会うのが楽しみになってきた。
いくら同じ会社に入れても、そう簡単に同じ支店になれるわけがないんだ。
なら、今を楽しみながら働きたい、そう頭を切り替えたときだった。
「「遅れましたー!」」
男の人と女の人の声がした。
振り返ると思わずあぜんとした。
背の高いイケメンの後ろから、華奢で人懐こい笑顔で手を振る女の人が出てきた。
まさに、俺がずっと探していた人だった。
「お前ら遅いぞー!こら、冴木!新人もいるんだ、まだ座るな!」
営業課長が言うと、どっと笑いが起こる。
「あれがさっき言ったユリだよ」
向かいから香月さんが笑いながら言う。
ユリさんは笑いながら立ち上がる。
その隣で男の人が課長と話している。
すると、男の人が話し出した。
「今日、折角の結団式と懇親会なのに遅れてすみません。企画課主任の石田創樹です。新入社員の皆さんよろしく!」
爽やか笑顔に拍手がおこる。
男から見てもかっこいい。
「同じく企画課の冴木由梨と申します。すみません、遅くなりました。なんとか間に合ってよかったです。新入社員の皆さん、今日は楽しんで行ってください。私も遅れた分、がっつり楽しみます。」
ユリさんがそう言うと会場がどっとわいた。
営業課の課長が声を出す。
「じゃあ全員揃ったことだし、改めて乾杯だ!」
ユリさんがこっちに近づいてくる。
そして香月先輩の隣に席を取る。
「お疲れさん。」
十時先輩が言いながらグラスを渡す。
コポコポと音を立てながらビールがグラスに入っていく。