灯る光-9
「金曜日に男の人の車に乗り込むのを見て、土曜日に一緒にいるところを見たって。聡くんといたわけじゃないんでしょ?大輔くん?」
「うん、大輔くん。金曜日に大輔くんの家の近くの居酒屋さんで飲んで、その後大輔くんの家で飲み直したの。そしたらそのまま寝ちゃって…で、朝駅までチャリで送ってもらった。佐藤くんには駅まで送ってもらったトコを見られて、駅で言われた。まさか大輔くんのこと誤解されるなんて思わなかったから。びっくりして。」
「まぁ、金曜日に男の車に乗り込んで、その土曜日の朝に男の後ろから降りるのを見れば普通に朝帰りじゃない。私は由梨に大輔くんのこと聞いてたからわかるけど、知らなければ恋人か、付き合う前の恋人状態じゃない?」
「大学時代からの友人からは仲良すぎって言われてたけど、付き合ってると思われたことなんてなかったし。友達以外意識することなんてなかったし、昔から普通に大輔くんの家に泊まってたしね…」
理恵が笑う。
「ま、佐藤くんはタイミングが悪かったわね。で、どうなの?その大輔くんとは?」
理恵の言葉に思考が固まる。
理解するまで時間がかかった。
「どうって?」
「だから、彼氏候補じゃないの?」
理恵の言葉に目が点になる。
「な、何で?!」
「何でって、私が由梨の立場なら大輔くんに惚れるなぁ。だって、修羅場を助けてもらって、その後ずっと一緒に居てくれて、連絡マメにくれて、頼っていいって言われて、おまけに鍵を渡され…。友達以外意識することないのは由梨だけかもよ?」
理恵が意地悪そうに言う。
「そんな…だって大輔くんはお兄ちゃんみたいで、落ち着くんだもん。」
「由梨と大輔くんはいいと思うけどね。上手いこと補えてる感じ。まぁ、それが恋人状態だけに当てはまるとは思ってないけど。」
理恵が見てくる。
思わず私は理恵を縋る目でみてしまう。
「そんな顔しないでよ。ま、大輔くんとはなるようになるわよ。大輔くんは由梨をよくわかってるみたいだし。由梨は今まで通りでいいんじゃない?多分、大輔くんを前にすると大輔くんの雰囲気に呑まれて今まで通りになりそうだけど…今週末も飲むの?」
「今、大阪に出張。週末は東京旅行の予定…大輔くんは他に行く人がいなかったら行ってくれるって。理恵、どう思う?」
理恵は嬉しそうに言う。
「あら、いいじゃない!一緒に行ってきなさいよ!誕生日もお祝いしてくれるんじゃない?」
「理恵、大輔くん贔屓だよね。」
「そりゃあね。大輔くんはいい男だと思うよ。でも折角行くんだからそんなこと気にせず楽しみなさい。大輔くんなら由梨もそんなに気にせず行けるでしょ?」
「うん。でも佐藤くんどう思うかな?」
「由梨は由梨。佐藤は佐藤。大輔くんは大輔くん。由梨が大輔くんと行きたいなら行けばいい。それとも佐藤と行く?」
考えたけど、想像できない。
会話が続かない気がして、首を横に振る。