灯る光-4
化粧を直し、髪を整える。
スーツの埃を取り、靴を確認する。
携帯を確認しようと取り出すと、不在着信のランプが点滅している。
慌てて取り出す。
何となく大輔くんのような気がした。
着信は5分前。
大輔くんだった。
掛け直そうと思った矢先、本人から再び電話があった。
急いで通話ボタンを押す。
「もしもし」
『お、出たな。まだなのか?』
「うん、今から。」
『悪い。俺今から大阪行くんやけど、今日まるまる携帯使えん。何かあったら連絡しろって言ったのにすまん。また明日連絡する。』
「わかった。いつもありがとう。」
『元気ねーな。大丈夫か?緊張か?』
「…ちょっとね。」
『自信持てよ。お前の笑顔とゴリ押しの明るさで何とかなるって!おっさんは若い女の笑顔に弱いからさ。何とかなるさ。』
「ゴリ押し?」
思わず笑ってしまう。
『おう!成功したら東京で飯奢ってやるから!頑張れ!』
「うん、ありがと。頑張るよ!」
『やべ、出発する!悪い、また明日な!』
そう言って大輔くんはバタバタ電話を切った。
携帯の電源を切り、鏡を見る。
口角をあげ笑顔を作る。
目を閉じ、深呼吸する。
大輔くんの言葉を思い出す。
目を開け、顔を上げる。
さっきより少し明るい顔に見える。
きっと思い込み。
でもそれが大事。
両頬を叩いて会議室に向かう…
春からずっと温めてきた企画。
5つの企画の中から選ばれ、今日この役員会議でOKがでれば採用される。
いつも先輩の手伝いでしていたこの会議。
まさか自分がすることになるなんて思ってなかった。
どうしても失敗できない。
プレッシャーにも負けられない。
廊下がいつもより長く感じる。
就職活動の面接みたい。
でも、ライバルは自分自身。
一つ深呼吸して、ドアを開けた…