やっぱすっきゃねん!VP-1
武蔵中との試合翌日、佳代は朝早くに目覚めた。
「あじい…」
昨夜は、一哉が持ってきてくれた馬肉を肩に貼って眠る事にしたのだが、その際、肉汁でシーツを汚さないよう、急遽、加奈がビニール・シートを敷いたのだ。
が、しかし、
「びしょびしょ…気持ち悪い」
おかげで、全身汗まみれの始末。
「…シャワー浴びて、病院行こう」
不快極まりない面持ちで下に降りて行くと、すでに家族3人は起きていた。
「おはよう」
現れた娘に、健司はいつもと変わらぬ笑顔をふりまいた。
「どう?肩の痛みは」
加奈は、容体を訊ねる。
「痛みは引いたみたいだけど…」
答える佳代は表情を曇らせた。
「背中から足先まで汗ぐっしょり…よく眠れなかった」
「その割に、起きてきたのは最後だね」
テーブルにいた修が茶々を入れた。いつもなら大きな声で反撃するのだろうが、今はそんな気分になれない。
「わたしゃ夜中に一度起きてんの。これを貼り替えるために」
そう云って左肩を指差した。
「それよりも、それ取ってシャワー浴びてくれば?」
「うん。そうする」
佳代は、ガーゼごと馬肉をゴミ箱に捨て、キッチンから出て行った。
「気持ち悪い…」
脱衣所で、ハーフパンツを脱いでシャツに手をかけた。汗で貼り付いて脱ぎ難い。いつものように一気に取り去ろうとした時、
「あ…」
ハッと異変に気づいた。次の瞬間、バスルームを飛び出し、ドタドタとキッチンに走り込んできた。
「か、母さんッ!」
血相を変えて現れた佳代は下着姿のままだった。途端に健司と修は目を背けた。
「なんて格好してんの!」
羞恥心の無い娘を叱りつける加奈。が、本人は興奮した様子か聞こえていない。
「見てよ!ホラ」
すかさず両手を上げて見せた。バンザイの格好をして顔をほころばせている。
「あんた…それ?」
「何気に服脱いでたら、肩が上がったんだよ!」
やり取りを見た修が、直ぐに近寄った。