やっぱすっきゃねん!VP-7
「ただいま…」
「あっ、お帰りなさい」
「何?あれ」
修はバッグを投げ出し、冷蔵庫から麦茶を取り出す。
「あれね、佳代の友達が、夏休みの課題を教えてくれてるのよ」
「へぇー、姉ちゃんの友達が」
「どうせ野球ばっかりで課題やってないだろうからって。朝からやってるのよ」
「朝からやってるの!」
麦茶をコップに注ぐ手が止まった。
「そうよ。わたしが仕事に出かける直前に来てくれたの」
「じゃ、じゃあ、6時間以上も…」
「そうね」
加奈は普通に答えるが、修はにわかに信じられない。姉が2時間以上机にむかう姿なんぞ、想像出来無い。呆け顔のままリビングの方を見つめる修に、声が掛けられた。
「修、先にお風呂入っちゃいなさい」
しかし、茫然としたままの修には聞こえてないようだ。
「修!修ったらッ」
「えっ?」
何度目かの呼びかけに、ようやく気が付く。
「…何か云った?」
「先にお風呂に入って、こっち手伝ってよ」
「う、うん…」
未だ呪縛から醒めやらない様に、修はキッチンから出て行った。
それから2時間ほど経った頃、修と加奈がリビングの中へと入ってきた。
「は〜い、勉強はそのへんにして」
2人の姿に、尚美と有理は姿勢を改める。
「はぁ〜!やっと解放された」
対して佳代は、床に足を投げ出した。途端に、加奈の叱責が飛んだ。
「アンタがだらしないから、友達に迷惑かけてんでしょ!」
すぐに佳代が、座り直した。
「そんな怒んなくたって…」
いじけて見せる姿に、周りはクスクスと笑っている。テーブルの上には、出来たばかりの夕食が置かれた。
「すいません。そのまま居ちゃって」
「何云ってんの!わたしが居てって頼んだんじゃない」
恐縮気味の尚美や有理に、笑顔で返す加奈。
「出来の悪い佳代の面倒かけちゃったんだもの。それに、昨日も直也が来てたんだから」
「直也…がですか?」
尚美は一瞬、佳代の方を見た。勉強中、そんな話、一言も無かったからだ。