やっぱすっきゃねん!VP-5
「ありがとう」
「佳代…」
「ずっと2人に応援してもらってるのに…わたし…」
悔し泣き。尚美にも気持ちは分かる。彼女もバスケットで、何度も同じ思いをした。
しかし、彼女は同情心を切り捨てて、初志にあった表情を佳代に向ける。
「ところでさ、今日は元気づけるために来たんだけど」
「何を?」
佳代は腫れた目で尚美を見つめた。
「有理と色々考えてね。最初は海に連れて行こうかとも思ったんだけど、アンタ治療中だからマズイなって。
他にも、映画とかゲームとか考えだけど、どうもしっくり行かなくてさ」
そこまで説明して、尚美は満面の笑みを佳代に向けた。
「それで決まったんだ!」
「…な、何?」
すでに、佳代の涙は止まっていた。そればかりか、次の言葉に期待を膨らませている。
その言葉とは、
「ここで、夏休みの課題をやるの!」
「えええーーっ!!」
急転直下とはこの事か。佳代の気分は、ピークから一気にボトムダウンした。
「せ、せっかく3人揃ったのに、勉強って…」
あからさまに不快感を表す佳代に、今度は有理が話しかける。
「佳代ちゃん。今、課題はどのくらい進んでるの?」
「どのくらいって…3…いや4割くらいかなァ」
進捗状況を問われて口ごもる。自分でも、遅れてるのは自覚してるのだ。
「だったらさ。今日は3人でやりましょう。お喋りしながらやれば、楽しいわよ」
いつも勉強を教えてもらってる有理に、こうまで云われては何も云えない。
「分かった。用意するから…」
「因みに、わたし逹、アンタのお母さんから夕食食べて行きなさいって云われてるから」
立ち上がろうとする佳代に、尚美が茶々を入れた。
「ちょっと待ってよ!じゃあ、夜までやるの!」
「そうだよ。これもアンタのタメなんだから」
「…最悪だ…」
佳代は、肩を落としたまま、リビングを後にする。それを見た2人は、ケラケラと笑った