記憶-1
薄い紫色に煙る部屋。
むせかえるような甘い匂い。
そして、聞こえるのは荒い息遣いと、微かな喘ぎ声。
「んぁ……やめ……あぁ…う……んぅ……」
何故こんな事になってしまっているのか訳がわからない。
「や…めて下さい……兄上!!」
そう、今自分にのしかかって躯中を舐め回しているのは、片親とはいえまぎれもない自分の兄なのだ。
ファン国王の妾の子として産まれ、15歳まで母方の祖父の古武術道場で厳しい修行を耐えた。
城に来たのは3年前……まずは姫として恥ずかしくないようにマナーやら、王族間の決まりごとやら、外交手腕など様々な事を叩き込まれた。
父王は五年前に他界しており、正妻である妃は元々病弱で父王の後を追うように逝ってしまった。
現国王は上の兄、ラインハルト。
まだ、30歳の若き王だが、優秀な側近達に支えられながらなかなかの手腕を見せている。
ラインハルトと双子である次兄、ギルフォードはラインハルトの片腕的存在。
自分はその2人の近衛。
そういう位置づけだったハズなのに、なぜ現国王である兄が自分の躯を弄っているのだろうか。
「はあうっ!やあっ!あっあうぁ」
胸の頂点をしゃぶられて一際高い喘ぎ声があがる。
「やめ……てぇっ!兄…上っ!」
人生初の快楽に溺れてしまいそうになる。
抵抗したくとも躯が上手く動かず、頭の中もぐちゃぐちゃだ。
なぜ?どうして?がぐるぐるぐるぐる……いつもは優しい兄は何も言わずもくもくと愛撫を施す。
「あっ…あっ…ああぁぁあっ!」
目の前に火花が弾け、躯が硬直した。
一瞬、どこかに飛ばされそうな気がして、胸にしゃぶりついている兄の金色の頭にしがみつく。
「……っは…ぁ……」
「キアルリア」
この行為が始まってから初めて声をかけられた。
力が抜けたままうっすらと目を開けると、兄の顔があった。
自分と同じ緑色の目には困惑の中に喜びの感情が見える。
「胸だけでイったみたいだな」
これがイくということなのか……話には聞いていたが、体験してみるとかなり気持ちのいい事だというのがわかる。
「は……ぁ……」
なんでこんな事になっているのか聞きたいのに言葉が出ない。
兄は自分の肌を撫でつつあちこちにキスを落としてくる。
「可愛いな……では、こっちも可愛がってあげよう」
兄の手が太ももの内側をさする。
「っ!あ……や……」
イった後は躯が敏感になるらしく、ただそれだけでゾクリと肌があわ立つ。
兄の手は止まらずそのまま淫口へと進む。
「あぁうっ」
新しい刺激が電流となり背中を走った。
濡れ具合を確かめるように、水音と共に指が往復する。
「もうちょっとかな……」
兄はそう言うと頭をそこに下ろしていく。