記憶-11
「お前も……と思ったが……もしかして男性恐怖症とかにはなっていないだろうな?」
そういえば、ギルフォード兄様を振り払ったな……と思い出す。
咄嗟にではあるが、兄の口を塞いだりも出来たのだから大丈夫だとは思うが……。
「……ど…うでしょう?」
首を傾げると、兄が手を取った。
「これぐらいは?」
「大丈夫です」
グイッと手を引っ張られ、強く兄の胸に抱きしめられる。
「これは?」
小さく問いかける兄の鼓動が早い……。
答える代わりに背中に腕を回し、擦りよる。
「……では……」
兄の声に顔をあげると、緑色の瞳がゆっくりおりてくる。
「これは?」
囁いた兄の唇が自分の唇と重なる。
目を閉じて受け入れると、軽くついばむようなキスを何度かして顔を離した。
「どうだ?」
うっとりと目を開けると鋭い緑色の瞳……ラインハルト兄様とは違うキスに……キス……あれ?
「どうした?やっぱりダメか?!」
眉をひそめていると、兄が慌てて聞いてきた。
「あ……いえ、その……そういえばラインハルト兄様はしなかったな……と思って」
「何をだ?」
「その……キスを……」
「なんだと?!」
それ以上の事はやったが、どう記憶を辿っても口付けはしていない。
「っあの馬鹿がっ!キスもしないでって……意味がわからん」
もしかしたら、それぐらいは好きな相手と……と思ってくれたのかもしれない。
だとしたら、うっかりギルフォード兄様としちゃったので無駄な努力に終わってしまった……何だか申し訳ない……が、ラインハルト兄様の不器用な優しさに気づいた。
「?」
くすりと笑うとギルフォード兄様が首を傾げる。
理由を言うとギルフォード兄様が謝るような気がして、別の話をふる。
「いえ……双子の兄がゲイってどんな気分かなって……」
しかし、この話題は避けたかったようで、物凄く嫌な顔をされた。
「言うな……もしかしたら自分もそうなのかと、物凄く不安なのだ……」
ただの兄弟ならまだしも、双子だし……と、兄は暗い顔で語る。
兄は真面目に言っているのだろうが、聞いてる方は可笑しくてたまらない。