月の光-8
「あ、ごめん、起こしちゃったね。」
「いや、大丈夫。」
眠そうな顔で大輔くんが言う。
「腕、痛くない?ごめんね、大丈夫だよ。」
頭を浮かせると、大輔くんが手を引きながら答える。
「大丈夫。ねむれたか?」
「ぐっすり。」
「ならよかった。めし、食うか。食べたら送る。」
「ありがと。チャリでもいい?」
大輔くんが笑ってポンと私の頭に手を乗せる。
この優しさに甘えてしまう。
大輔くんは甘いと思う。
ついつい特別じゃないかと錯覚してしまう。
仲良くなるまでは怖いけど、仲良くなれば、かなり女の子にモテると思う。
顔を洗い、シャワーを借りて着替えると、パンと目玉焼きができていた。
優しく、家事もこなし、仕事も出来て、お金持ち。
なぜ彼女を作らないのか。
ご飯を食べながら聞いてみた。
「何で彼女作らないの?いいなって思う人とかいないの?」
「何で…まあ、いいなって思った女には既に相手がいるな。縁がないかな。」
「今、好きな人いないの?」
「…好きな人か。まぁ、いたけど…最後に好きになった奴がいい奴でさ。俺のことは完璧友達としてしかみてないから気楽で。それに慣れると面倒。ま、男は30過ぎても適齢期だ。」
大輔くんがニヤリと笑う。
確かにわかる。
新たに出会うのは面倒。
友達だったら、ある程度お互いのことわかってるし。
「お前、来週どうすんだ?誕生日だろ?」
大輔くんが聞いてきた。
そう、実は土曜日が誕生日。
本当は聡と東京に旅行に行く予定だった。
どうしても横浜に行きたかったから。
残念なことに、理恵は予定を入れてたからダメだった。
仲の良い女の子にはだいたい当たった。