月の光-5
大輔くんがドアを開けて店内に入る。
「いらっしゃーい」
気さくそうな、良い人そうなおじさんが迎えてくれる。
「お!大ちゃん!いらっしゃい!」
大輔くんも笑顔で答えてる。
2人とも楽しそうに話してる。
すると、おじさんの視線がこっちにうつり、目が合う。
会釈をして挨拶をする。
「いらっしゃい!大ちゃんにいっぱいご馳走してもらいなね!あっこのテーブルいいよ!」
そう言っておじさんが笑ってくれた。
席に座ると、大輔くんがお酒を注文する。
お目当てのおでんと、おつまみも。
カウンター席にはサラリーマンが座って満席。
テーブル席も5席あるけど、あと1席しかあいてない。
雰囲気も良くて、確かに人気ありそう。
「かんぱーい」
おじさんからのサービスと、お酒を飲みながら色々なことを話す。
大輔くんは無口な方だから、どっちかというと私が話すようになってしまう。
でも、どんなにくだらないことでも聞いてくれて、ちゃんと返してくれる。
本当にありがたい。
きっと今日も、気を遣って誘ってくれたんだと思う。
そして申し訳ない気持ちが出てくる。
ーーーっ!?
突然おでこに激痛が走った。
おでこを両手で抑え、正面の大輔くんを見ると、
デコピンをしたままの体勢で不機嫌な顔をしていた。
「お前、何考えてんだ?またマイナスのこと考えてたんだろ?」
う゛ぅー。
ばれてる。
「それも。由梨は顔に出すぎ。気にするなって言っただろ?そんなに気にされたら、俺が誘いにくい。」
「ごめん。でも、本当大輔くんのおかげで助かってる。今日もありがと。」
「ごめんは余計だ。いたらんこと考えるな。いつも通りヘラヘラ笑ってろ。」
大輔くんが赤くなってぶっきらぼうに言う。
何か嬉しい。
「じゃあ、もう1杯。へらへらなったら連れて帰ってね。」
「そういうへらへらじゃねーよ。飲んで酔っ払ったら連れて帰ってやるよ。ま、出会ってから今まで、酔っ払ってどうしようもなくなったのはこの間しか知らないから、大丈夫だろ。すみません!生2つ!」
大輔くんは本当にお兄ちゃんみたい。
実際年齢も2つ上…のはず。
留学していて、2年遅れで大学に入ったはず。
いつもついつい甘えちゃう。
だからついつい飲んじゃう。