月の光-2
「さっき管理部の女の子が話してたけど石田さん、ずっと片思いだったらしいからね。で、あんたは?大丈夫なの?飲みに行く?」
理恵が聞いてくる。
「今週は会議が3つあるし、来週月曜の本社役員会の準備もあるしね…厳しいかな。男もいなくなったし、気合入れて仕事するわ。来週も有給だったけど、でてこよっかなぁ。」
「あぁ、聡くんとの旅行だったんでしょ?東京だっけ??」
「うん…楽しみにしてたんだけどね。雷おこし。」
私の発言に理恵が笑う。
「由梨は花より団子ね。あんまり仕事しすぎると出会いがなくなるわよ?」
「わかってるけど、今はいいの。まだ出会いはいらない。彼氏が欲しくなったときのために今のうちに仕事をするわ。」
ホントにそう思ってる。
まだ恋愛をする気にはなれない。
「冴木さーん!内線です。」
裏から声がする。
「はーい! 理恵ありがと。結構平気なんだ。また後でね。」
そういって電話を取った。
この1週間は、電話、書類作成、営業出向、企画会議とバタバタ過ごす。
毎日この調子でこなし、あっという間に金曜日がきたのだ。
19時。
理恵は彼氏とデート。
そもそも理恵は事務だから私より帰るのは早い。
社内には私と石田さんがいた。
石田さんは携帯が鳴ると嬉しそうに席を立ち、話し出す。
例の彼女か…
大好きなんだろうな…
ドアの方を見てると、石田さんが携帯を持って戻ってきた。
「彼女と待ち合わせですか?」
「うん。今終わったって。俺、上がるけど冴木さんどうする?」
満面の笑みが返ってきた。
「私はもう少し。月曜日の企画書の最終確認と会議室の準備して帰りますから。早く彼女のとこにいってあげてください。」
「そっか。悪いね。月曜日の会議、楽しみにしてるよ。じゃあ、気をつけて。お先、お疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
石田さんはいつもの笑顔で帰っていった。
幸せそうな石田さん…
やっぱり羨ましいと思う。