月の光-10
「友達だよ、大学の…」
「前、香月先輩とも、昨日、十時先輩とも話してたじゃないですか。今は付き合わないって。」
「うん…誰とも付き合ってないよ。」
「だから俺は言わなかったんです。」
「何を?」
「先輩が誰とも付き合う気がないから、自分の気持ちを言わなかったんです。俺は、ずっと冴木先輩が好きでした。さっきの人と付き合ってるわけじゃないなら、俺と付き合ってください。」
ー?!
ちょっと待って、どういうこと?
頭がついていかない。
「さ、佐藤くん?」
「俺、本気です。返事待ちます。いつまでも待ちますから。社内携帯に俺の私用携帯のアドレス送っておきます。連絡ください。」
話が勝手に進む。
言葉が出てこない。
「じゃあ、俺は失礼します。冴木先輩、俺は本気ですから。」
そう言うと佐藤くんは来た道をもどって行った。
「ちょっと待ってよ…」
私は呟いて、そこから暫く動けなかった。