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続・せみしぐれ〜color〜
【その他 官能小説】

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続・せみしぐれ〜color〜(後編)-8

「…プッ」
「!?」
しどろもどろで焦る私。
その様子を、目の前の少年は、バカにしたような薄笑いを浮かべて眺めていた。
「ごめんね、お姉さん。あんまり一生懸命だから、つい意地悪したくなっちゃった」
…そうか、性格が悪いんだな、この子は。

「あんた、ちょっとモスラに似てる」
「モ、スラ?」
それは、確か昔の怪獣映画だったような…。
「うん。うちで飼ってる猫だけど」
「あ、…猫なのね」
良かった、巨大な蛾の怪獣じゃなくて。

「――まぁ、もうあいつにも会わないけど。元は、俺が拾ってきたんだけど、こんな人生負け組の俺じゃ、猫だって愛想尽かすよ。おまけに、俺を邪魔者扱いする両親の手で、こんなド田舎に幽閉されたんだから…お笑いだよな」

あぁ、また、あの目に戻っちゃった。
虚ろで、何も映さず何も見ようとしない瞳に。

――でも…。
ちょっと待ってよ。
なんでこの子、こんなに卑屈なの?
それに、彼を心配して遠い親戚のおじちゃん達にまですがった御両親のことを『邪魔者扱い』だの、ここを『こんなド田舎だの』…なんか、腹が立って来た。

「…ふ〜ん。まぁ、君が負け組とかはどうでもいいんだけど…遅れ気味な成績を挽回しにきたんでしょ?勉強はかどってるの?」
「…勉強なんて、どうでもいいよ!どうせ、いくらやってもバカはバカなままなんだよ」
つれない私の返事にイラついた様子の少年は、案の定、更に投げやりな台詞を吐いて寄越した。

「…そうね。どうでもいいと思っているのなら、君は永遠にこのままなんだろうね。でも、まだ高校生になって数ヶ月しか過ぎてない君が、一体どれほどの努力をして、何の結果が出たというの?」
「――――……」
「もう限界だと思えるくらい、頑張った?最大限に努力をした結果が、今の君の姿なの?」
「…努力とか、よくわかんねぇよ。中学までは、大して勉強しなくても成績良かったし…」

苦しげに吐き出すようにして、目の前の少年はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
何も映さなかったその瞳の中に、戸惑いの色が浮かび上がる。

「ねぇ、相模くん。君の世界は、そうやって広がっていくんだよ」
「え…?」
「『高校生』になって、君の世界の枠は広がったはずなの。その分、君は大きくなれるのに、まだ『中学生』のままで止まっているんだね。もったいないなぁ」
「…もったいない?」
「そうだよ。だって、君はこれから先、今まで知らなかったいろんなことを知ることができるのに、どうでもいいとか言っちゃってるんだもの」
「『どうでもいい』のは、学校の勉強のことだよ」
ぶっきらぼうな様子でも、ちゃんと話は聞いているみたいだ。


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