異国の姫君-9
「何がですか?」
ドレスが風で捲れるのを押さえながらキャラはエンに振り向く。
「ん〜?今ねぇアビィと感覚を共有してるんだけど……キャラってアビィに無防備だから魔力吸い放題だよぉ〜」
どうりでさっきから背中がぞわぞわするハズだ。
キャラは魔力を体内に留めるように意識する。
「あ……酷いなぁ〜」
「どっちがですか」
勝手に魔力を吸っておいて酷いは無い。
「あ、見えてきた」
1時間程飛ぶと王城が見えてきて、エンはこなれた様子で王城の屋上に着陸した。
エンにエスコートされ、アビィからふわりと降りたキャラの姿にアースは度肝を抜かれる。
「……化けたなぁ」
これならどっからどう見てもお姫様だ。
「褒め言葉としてとっておきますね」
口調も柔らかく、本当にキャラなのか疑いたくなる。
思わず鳥肌の立った腕をボリボリ掻いていると、さりげなく足を踏まれた。
どうやら、間違いなくキャラのようだ。
「お待ちしておりましたぞ、キアルリア姫」
国王はキャラの手を取ると、その甲に唇を落とす。
国王も外交用なのか、いつものてやんでぃな言葉使いではない。
「ゼビア国王、お久しぶりでございます」
キャラはにこやかな笑顔で素直にキスを受けている。
「ここでは何ですから儂の部屋にご案内しましょう」
「ええ」
国王はそのままキャラの手を引いて歩き出し、キャラはそれに大人しくついていく。
部屋につくと、応接用のソファーにキャラを座らせて、国王はその前の席につく。
キャラは横座りをしてスリットからさりげなく脚を覗かせる。
キャラの事情を知ってか知らずか、国王とアース以外の姿はない。
自動的にお茶を淹れる係はアースになるので、アースは一度隣の給仕用の小部屋へ行く。
「兄上がご心配されておりましたぞ」
しっかりとキャラの脚を鑑賞しながら、国王は話しだす。
「まあ、申し訳ありません。兄上は少し心配性なのです」
当たり障りの無い会話をしつつ、キャラは国王の腹の中を探る。
キャラが城を勝手に出た事も、ここに居るのを知られたくない事もわかっているハズだ。
ファンとトラブルを起こしたくないのであれば、強制送還、もしくは気づかないフリだが、わざわざ会うという事は……何かある。