異国の姫君-10
「儂は国王ですが小細工が苦手でしてな、単刀直入に言いますぞ」
「なんでしょう?」
「500年前に潰えた召喚師の技術を、我が国のために復活させていただきたい」
そうきたか、とキャラは心の中で舌打ちする。
アースはお茶を2人の前に出すと、入り口を警戒するようにドアを背にして立ち、無表情を決め込む。
「そうしてさしあげたい所ですけど、私はファンの人間です。ゼビアのためだけに……というのは出来ません」
我が儘を言う子供を諭すような表情を作ったキャラは、ハッキリと申し出を断る。
「ふむ、では兄上に迎えに来て貰った方がよいかな?」
脅してきた。
「ええ、そうですね……兄上にゼビアでの思い出をお話する事にしましょう」
キャラの言い回しに国王は片眉をあげる。
「私がスネーク一味に捕らわれた時の話など興味深いでしょうね」
ふふふ、と笑うキャラの目は……笑っていない。
「その時『迅速な対応のおかげで命が助かりました』と言うか『対応が遅れたせいで敵の慰み者になりました』と言うか……悩みますね?」
とびっきりの笑顔で首を傾げる。
国王は大きくため息をついて背中をソファーに預けた。
「何が望みですかな?」
どうやら腹の探り合いはキャラの勝ちのようだ。
「望みだなんて……ただ私がここに居るのを黙っていていただければいいのです」
聞いてきても知らぬ存じぬを貫け、ということだ。
「ゼビアのためだけでないのなら、召喚師の技術復活も全力でやらせていただきます」
これならお互いに損はないはずだ。
国王はくくくと喉を鳴らして笑い、お茶を一口飲む。
「わかりました。キアルリア姫。しかし、目立たぬように、で構わないので護衛はつけていただきたいですな」
また何かあったらたまったもんじゃない。
「あら、国王ったら……私はスオウ団長とアース隊長に勝てますよ?お聞きになっていません?」
護衛など鬱陶しいものをつけてほしくないキャラは、スオウとアース以上に強い奴が居るならつけてもらおうじゃないか、と遠回しに嫌味を言う。
「普段は学校におりますし、あそこには魔導師様が2人もいらっしゃるじゃないですか」
国王は頭をがしがし掻くと諦めたような表情になる。
「常に魔導師と共に居る事、これが条件ですな」
他は自由にして構わない。
ほぼキャラの希望を叶えるという形で謁見は終わる。
キャラは早々に立ち上がると優雅に貴婦人の礼をする。