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雪の舞踏会
【ファンタジー その他小説】

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雪の舞踏会-1

俺は独りで寒空の下をさまよう。頭が熱くなってしようがなかったため、この寒さがちょうどよく感じられる。勉強の疲れを癒すには最適と思うのだ。

時計の長針が、後15度ほど進めば日付が替わる頃、俺は家の近くにある緑地公園へと辿り着いた。公園の敷地内に入り暫し歩くと、適当なところに濃紺に塗られた小さなベンチがあった。腰を降ろす。
「ふぅ……」
一つ小さくため息をつく。
ここは、最寄りの駅から俺の家までの道の途中にあるため、昼間はよく此処を通るが、こんな真夜中に来るのは初めてだった。日中は親子連れだの、飼い犬の散歩だので結構人が集まる場所なのだが、流石にこの時間帯では人っこ一人いない。
ふと虚空を見上げる。空には薄雲かかり朧に光輝く月。星もちらほら見えるが、こちらも仄かに雲がかかっている。なんとも、趣き深い情景だ。冬特有の澄んだ空気に、月明かりも心なしか一層艶麗である。

物思いに耽っていたところに、突然頬に冷たい感触。よくみれば、ちらりほらり、雪が舞っている。それから間もなくすると空一面を細雪が覆う。
ハラハラと舞う細雪。朧月の影に照らされ、それはまさに、天空よりの金剛石であるように思えた。

再び地表に視線を戻す。
俺は自分の目を疑った。今座っているベンチから遥か前方、丁度芝生の広場のようになっている所だが、先程まで誰も居なかった筈のその場所に、誰かがいるようなのだ。
こんな時分、俺の他に誰がこんな所に来るんだ、と思いながらじっと目を凝らしていると、その人影はまるで踊っているようなのだ。
遠方なので判断は容易くないが、華奢な体駆を見る限り、少女であろう。純白の長丈のドレスを身に纏い可憐に舞う姿は、まさに雪の妖精の如く、先程から降り続き、夜特有の弱い風に吹かれ宙空を舞う細雪とともに舞をするその様子は、舞踏会さながらの優雅さを釀し出していた。

俺はベンチから立ち上がり、その妖精のもとへと歩を進めた。
その時である。突然北の見当より、一陣の風。俺の顔に風と一緒に雪が吹き付け、目が開けられなくなった。
暫しの後に風は止んだ。だが、前方の広場にいた筈の妖精は忽然とその姿を消していたのだ。俺は驚いて駆け寄ったが、そこには、誰かがいた形跡は全くと残っていなかった。


それからというもの、俺は毎日のように同じ時刻に公園へ通ったが、その日以降、雪も降らず、終に俺は再び『妖精』に逢うことは無かった。

〜Fin〜


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