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家庭教師
【同性愛♂ 官能小説】

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第二章「面接」-2

「ごめんなさいね、塾の先生に家庭教師なんて無茶なお願いして」
「いえいえ、塾の掛け持ちは大変っていうシノブ君の気持ちも分かります。私でも塾を二ヶ所とか、精神的に疲れますよ。個人的な話を遠慮なく言わせてもらえれば、いい副業ですしね」
「シノブがどうしても先生が良いって聞かないもので……」
「……は? お母さんが私を薦めたんじゃないんですか?」
「土日の塾か家庭教師かって話は前からしていたんですけど、あまり乗り気じゃなかったみたいなんです。そうしたら、先生が家庭教師をしてくれるなら、と本人が……」
「はあ……。まあ、なんにせよ、やる気が出てくれるのなら良いことですよ」
 シノブの意図が今一掴めなかったが、確かに本人のやる気は感じていたので、俺は時間や報酬などの細部について、シノブの母親と詰めていった。

 ***

「それでは、毎週土曜日の夕方六時から八時まで、教科は数学と英語、一回五千円でよろしいかしら?」
「ええ、それでお引き受けします」
「先生、よろしくお願いします」
 シノブはわざわざソファから立ち上がり、律儀にペコリと頭を下げた。その様子を満足そうに見ていた母親を見て、俺は得心した。男も中学生になると言葉遣いが荒くなってくるものだが、普段のシノブは遠慮なく喋りかけてきても、言葉遣いや礼儀はキチンとしていた。どうやら、シノブの品の良さは家庭教育の賜物のようだ。昨今の中学生としては珍しい。
「夕食はこちらでご用意させていただきますので」
「え……いえいえ、そこまでお世話になるわけには……」
「食べてってよ、先生」
 シノブは、また上目遣いで俺を見つめた。この野郎……
「わかりました。ご馳走になります」

 ***

 シノブの家庭教師は翌週の土曜日から始まった。
 平日の夜は塾で、土曜日の夜はシノブの家で勉強である。
 玄関のインターホンを鳴らすと、先週のようにシノブがドアを開けた。
「こんばんは、先生!」
「お、おう……」
 俺は視線を思わず泳がせてしまった。
 暑くなってきたせいか、シノブはTシャツに短パンという、先週よりもさらにラフな格好をしていたのだ。白くて綺麗な素足が露になっている。男性ホルモンが薄いのか、スネ毛は全く生えていないため、思わずさすりたくなってしまう。
 パッと見、性別不明なシノブなので、俺と同年代の女が見れば、おそらく俺と同じような反応をするだろう。まったく、目のやり場に困るじゃないか……。
「お母さんは?」
「まだ買い物中。終わるまでには帰ってくるって」
「それじゃ、お前さん一人か?」
「うん」
 ならば、今のうちに……などと考えたわけではなかったが、一瞬、思考が邪なほうへ流れかけたのは否定しない。
 シノブの案内で、俺は教え子の部屋に入った。
 シノブの部屋はいたってシンプルだった。サッカーボールやらラジコンやら、そういった普通の男子中学生らしいものは全く見当たらない。勉強机にノートPCがあったが、これは男女に関わらず、持っていてもおかしくないだろう。
 壁際には本棚と勉強机があった。反対側の壁は一面が収納スペースのようで、アコーディオン型の開き戸になっている。開くとガラクタが雪崩のようになるのでは、というマンガ染みた妄想に俺は駆られたが、それくらい部屋の中は綺麗に片付いていたのだ。殺風景なほどだ。
 家具はそれぞれが統一されたデザインとなっており、なかなか趣味が良い。中学生の好みには見えないから、おそらく親が選んだものだろう。
 本棚に目を向けると中学生らしく少年向けのコミックがあったが、同じくらい少女向けのコミックもあった。俺自身、『パタリロ!』とか『ガラスの仮面』とか読んでいたから、それは別におかしくはない。
 おかしいのはコミック以上に多い小説で、そのジャンルは俺以上に幅が広かった。


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