消えた光とかすかな光-18
駅に着くと、大輔くんが私の前に立つ。
「無理だけはすんなよ。明日も俺は暇だから、何かあったら連絡しろよ。」
「うん、ありがとう。」
すっと大輔くんが手を前に出す。
「何…?」
「貸しとく。手だせ。」
言われて手を出すと、鍵が2つあった。
「なにこれ??」
思わず大輔くんを見上げてきいてしまうと、大輔くんはニヤリと笑って言った。
「このチャリの鍵と、うちの鍵。俺も平日は仕事だし、チャリ使いたいなら使え。来たい時に来い。ゆっくり飲もうぜ。彼女もいないから心配ないぜ。お前は信用してるよ。遠慮なくこい。」
そう言ってもらえると、ホントに行きたくなってしまう。
ホントに優しい人。
甘えたくなっちゃう。
「大輔くん、いつか女に騙されるよ?」
「騙すような女とは付き合わねーよ。言ったろ?お前は信用してるよ。付き合い長いんだ。」
大輔くんは誇らしげに言う。
その笑顔に安心する。
ホントにお兄ちゃんみたい。
帰ろう。
聡を思い出して、淋しくなったら大輔くんに電話しよう。
「まずは掃除する。ホントにどうしようもなくなったら、電話するね…」
「おう。その時はお前の家まで行ってやるよ。」
「じゃあ、またね。大輔くんホントにありがとう!」
「またな、気をつけろよ。」
大輔くんに手を振り、駅に入る。
帰ったら、聡を思い出すものはしまうんだ。
頑張って伸ばした髪も切ろう。
しばらくは仕事に生きる。
女子会行って、大輔くんと飲もう。
大輔くん…
ホントに助けてもらってばかりだった。
大輔くんが居てくれて良かった。
ちょっとだけ、甘えさせてもらおう。
電車を降り、駅から出る。
空を見上げる。
快晴。雲は少しあるけど、陽射しが暖かい。
「大輔くん、ありがとう。」
空に向かって呟き、家までの道を歩く。
次の人はまだ考えられないけど、できるまでよろしくね。