秋桜の季節-1
儚き桜がひらひら舞い散る季節が終わり、
夜空に大輪の花を咲かせる季節も終わった。
やっと巡ってきた季節。
大好きな秋桜の季節。
今年こそ…
この思いを伝えたい。
秋雨前線に開放されたかと思ったら今度は台風の連続…
やっと晴れたと思ったら、すぐに雨。
つい最近まで暑かったのに、一気に肌寒い。
今日も仕事に出かける。
洗濯物はたまる一方。
室内干しは嫌だから外に干したい。
でも雨だから外には干せない。
太陽の光を浴びたふわふわの洗濯物が恋しくなる。
仕事に行っても雨の日はどうも憂鬱。
お客様は少ないから少し息抜きもできていいんだけど、やっぱり嫌だ。
だって、あなたも来ない…
「浜村くん、高梨さん!」
一日の営業が終わり、書類を作っていた私の後ろから上司の声がした。
「はい!」
私、高梨伊織はすかさず返事をする。
書類をそのままに上司のデスクに近づく。
上司の倉山は渋い顔で手元の書類を見ている。
折角綺麗な顔なのにもったいない。
目が疲れたのかメガネを取ると大きく伸びをし、こちらを見た。
「あれ??浜村くんは??」
「浜村さんはさっき休憩室に行ってましたよ。」
私の返答に倉山さんは続けた。
「まあ、いいや。高梨さんにお願いがあるんだけど…」
「はい」
「明日のことなんだけど、午前中俺が会議で、午後は浜村くんに外回りをしてもらおうと思うんだ。だから窓口は主に高梨さんになるんだけど、いいかな??勿論午後は俺も入るけど。局長とも話して、多分雨も続くしお客さんもそんなに多くないと思うから大丈夫だろうと判断したんだが。」
「大丈夫です。助けて欲しいとき呼びますから。会議早く終われるように頑張って下さいね。」
「高梨さんに行って欲しいよ。リーダーは高梨さんに弱いからなぁ。」
「そんなお偉いさんの会議には行きたくありませんよ」
2人で笑っていると浜村さんが事務室に入って来た。