秋桜の季節-5
緊張と嬉しさで声が震える。
「と、とんでもない!」
〜♪〜♪♪〜♪〜
タイミングよく石田さんの携帯が鳴る。
石田さんが話し出す。
「あ、帰ってきてんの??
ー
悪い、今日は無理。ちょっと送る人がいるから。
ー
いや、違う!
ー
もういいって!今向かってるから勝手に持っていくぞ!じゃあな。」
石田さんの敬語じゃないとこ見れて何か新鮮!
でも、何か私が邪魔してる気がする。
「すみません、高梨さん。友人が戻ったみたいで。」
「むしろすみません、私が邪魔しちゃいましたかね??」
「いえいえ!流石に2日連続はちょっと。私も今日は車で戻りたいです。朝の電車はなかなかきついですね。」
石田さんは苦笑いで答える。
でも、お邪魔な気がしてたまらない。
やっぱり今日はこのまま失礼しようかと思う。
「石田さん、あのっ」
「創樹!」
私が話しかけた瞬間、前方から同時に声がした。
私も石田さんも声の方を見やる。
そこには石田さんと同じスーツ姿で、でもオシャレな人って分かる背の高い男の人。
大きく手を振っている姿は可愛い。
「すみません、あの車の隣にいるのが友人なんです。土谷です。結局気を遣わせますね。早めに切り上げます、本当にすみません。」
石田さんが謝ってくる。
むしろ私が邪魔なんだけど、
今ココで駅に戻ったら明らかにお友達さん、土谷さんに失礼な気がするし…
申し訳なさすぎる。
「いえ、こっちこそ本当にすみません。」
もう、謝るしかできない。
「遅いぞ!創樹!これ、あずさが創樹にって。蓮根。」
土谷さんは話しながら車の方から駆け寄ってくる。
あずさ…??
女の人。
浮かれきってた頭がやけに冷静になる、そんな気がした。