秋桜の季節-4
「はははっ!高梨さん、落ち着いて。」
石田さんが笑った。
いつものはにかむような笑いじゃなくて、声出して笑った。
笑わせたのは私ですけど…。
「すみませんっ!」
「いや、謝らないでください。高梨さんはいつも元気ですね。全然迷惑じゃないですし、今は彼女もいませんし、帰り道の途中なので全く遠回りではないですよ。こんな機会もないですし、高梨さんが良ければ是非送らせて下さい。少し今から歩きますが。」
石田さんが柔らかく話す。
何か幸せすぎて泣きそう。
彼女いないし、車に乗せてもらえるし。
でもいきなりだし、本当に悪い気がしてくる。
「本当にいいんですか??何だかすごく申し訳ないんですけど…」
「大丈夫です。では、行きましょう。5分もかかりませんから。ちょっと先に連絡しときますね。失礼します。」
そう言って石田さんは携帯で電話しながら歩き出す。
私もその後を着いて行く。
急な展開に頭がついて行かない。
急接近になってしまった。
しかも彼女がいないこともわかってしまった。
けど、告白はまだ無理。
こんなことになるならもうちょっと可愛い服を着てれば良かった。
仕事終わってきちんと化粧直ししとけば良かった。
「高梨さん、すみません。」
「はいっ!」
一人考えすぎて呼ばれただけでびっくりしてしまう。
もう、さっきから印象最悪な気がする。
「友人がまだ戻ってないので、このまま車を取ってすぐ帰ります。なので、そんなに硬くならないでください。気を遣わせてしまって申し訳ないです。」
「とんでもない!こちらこそお気遣いいただいて、ありがとうございます!」
2人で道を歩く。
なんだかデートみたいでドキドキしてきた。
石田さんはゆっくり歩いてくれる。
ふと隣を見上げると石田さんと目があう。
「もうすぐ着きますので。気を遣わせてしまってすみません。」
ドキドキと私の中でこだまする心臓の音。
ばっちりあった目。
石田さんの声。