秋桜の季節-13
「お先します。お疲れ様でしたー!」
皆さんに言って更衣室に向かう。
急いで着替えて、化粧直しをする。
いつもより念入りに。
でもポーチの中じゃ限度がある。
気を抜かずちゃんと持ってくれば良かった。
局を出る前に電話をする。
初めて掛ける。
石田さんの携帯に。
それだけでドキドキする。
呼び出し音より自分の心臓音が大きい。
……『お疲れ様です、石田です』
出たー!
当たり前なんですけど。
「あ、高梨です。終わりました。」
『わかりました。車を回しますので駅の前によろしいでしょうか?10分くらいで着くと思います。』
「はい、じゃあ入り口のとこに居ます。」
『寒かったら中に居て下さい。着いたら携帯鳴らしますので。ではまた。失礼します。』
あー。
心臓がドキドキする。
でも相談ってなんだろう。
考えながら局を出て、地下鉄まで歩く。
地下鉄の駅の入り口の隣に可愛いお花屋さんがある。
そういえば昨日、窓口にオープンしますって店長さんが来てたっけ??
今日からオープンって言ってた。
中を覗くと、観葉植物や可愛いブーケが沢山ディスプレイしてあり、女の子が好きそうなお店だった。
「いらっしゃいませ」
昨日の店長さんが挨拶をして、笑いかけてくれた。
入り口すぐのところにコスモスの切り花があった。
気になって寄って見る。
ふと視線を感じると、店長さんと目が合う。
「コスモスお好きですか??」
「はい。綺麗ですよね。」
私が答えると、店長さんは少しためらい気に聞いて来た。
「あの…郵便局の方ですか??」
「はい。」
返事をすると店長さんは満面の笑顔で話を続ける。
「やっぱり!郵便を出しに行ったりで、制服姿は何回か拝見したんですが、私服姿はやっぱり雰囲気変わりますよね。ちょっと自信なくて。ジロジロ見てしまって、ごめんなさい。」
「いえいえ、よくお客さんからも言われるんですよ。」
「窓口にいくと、いつも年が近いんじゃないかって思って、勝手に親近感湧いてたんですよ。私28なんですけど。」
店長さんは明るく気さくに話しかけてくれる。
ホッとする雰囲気があった。