金色の双眸-1
ゼビアの国には、魔法学校があり、全世界から魔力を持っている人々が集まる。
その学校の教室の一つで、魔導師による魔法原理の授業が行われていた。
「魔法ってのは、魔力によって様々な物質をねじ曲げる事だ。つまり、そこにある物質しか使えない。空気中には水分があるから比較的『水』系や、『風』系の魔法はどこでも使えるが、『火』系となると火種がいるからな」
教壇に立つ黒髪黒目、赤い糸で魔導師の称号である紋章が刺繍された黒いフード付きのジャケットを着ているアースの言葉に、1人の生徒が手を挙げて質問する。
「系統がわかりにくい魔法もありますよね?物を浮かすとか……」
「ああ、そりゃぁ、経験するしかねぇけどな。例えば……」
黒い目を金色に変えたアースが、言葉を切って指をクイッと曲げると、教卓に置いてあった分厚い本がスッと浮く。
「これは、『風』系と思われがちだが、なんの系統も使ってない。いわゆる『服従』型だ。『お前は浮ける』と思わせる事によって、物を浮かす事ができる。『服従』型は気合いが必要だからな、舐められると自分に返ってくるぞ」
アースはそう言うとその分厚い本を動かして、居眠りしている生徒の頭に落とした。
ゴスッ
物凄く痛そうな音に、他の生徒達が顔をしかめる。
「……って」
サラサラのプラチナブロンドを1つに括った頭をおさえた生徒…キャラはむくりと起き、緑色の目を前に向ける。
「俺の授業で寝るとはいい度胸だ。……が、次寝たらこんなもんじゃすまないぞ」
金色の目で睨まれたキャラは、ムッとする。
(いったい、誰のせいで寝不足だと思ってんだ……)
昨夜、あんな事やこんな事をしてきて、なかなか寝かしてくれなかったのは……誰であろう講師のアースだ。
「……すみません」
言いたい事は山ほどあったが、言うわけにもいかず、とりあえず謝る。
「おーし、続けるぞー」
アースは本を手元に戻して授業を続ける。
アースは魔法に関しては厳しく、スパルタ授業なのだ。
実技指導などは騎士団の訓練なみに厳しい。
たとえ相手が愛しい恋人であろうが容赦はしない。
(結構、仕事熱心なんだよな……)
ちゃらんぽらんに見えるが仕事優先の生活を送っているのを知っている。
そういう所も好きだなぁ、と思ったキャラは軽く頬を叩き、真面目に授業を受けた。
無事に授業が終わると、キャラは大きく伸びをしながら欠伸をする。