〈晩秋〉-4
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「ふぅ……疲れた……」
一仕事終えた友紀は、自宅へと戻っていた。
それなりの都市のそれなりの高級住宅街に、友紀は自宅を構えていた。
(さあ、ストレッチしてシャワー浴びて…か……)
軽くメイクを落とすと、友紀は自室の床にボディーマットを敷き、ストレッチ運動を始めた。
身体というのは衰えていくものだ。
それは友紀とて例外ではない。
せっかく天から与えられた美貌を、少しでも長く保つ為、友紀は努力を怠らなかった。
カロリー計算は言うに及ばず、ストレッチや筋トレ、時間が許すならエステにも通う。
それは人前に出る仕事だからという事もあるが、美しさは強力な武器である事を知り尽くしていたからだ。
高い授業料を払ってでも男性達が通うのも、この美しさがあるからだ。
そして、他人が羨むような男性を手に入れるにも、この美貌は必要な事だ。
事実、恋愛での主導権はいつも友紀が握っていたし、フッた事はあってもフラれた事は無かった。
だが、そんな友紀ももう32才。
確実に老いは感じられていたし、いつまでも恋愛だけで終われる年齢でもなくなってきた。
「まだ自分は大丈夫。誰にも負けてない」
と、自分に言い聞かせても、心の何処かに焦りがないと言えば嘘になる。
決して自分を安売りしている訳ではないが、友達以上の付き合いの男性は数人は居たし、彼氏と呼べる男性も一人や二人でもない。
そして、今日もこれから、また気合いの入ったメイクを施し、これみよがしの衣服を纏って男性の元へと行くのだ。
それは不純ではないだろうし、恋愛ゴッコとも違うだろう。
女性が男性を選ぶ事は、至極当然の権利のはずだ。
「…あ、私。ゴメンね遅くなって……え?…迎えに来てくれるの?嬉しい」
猫撫で声で通話し、可愛らしさを強調して電話を切った……今夜これから、その男性の愛を確かめ、更に深めていくかどうか吟味するのだろう………。