〈晩秋〉-12
『友紀先生……この腰の括れ、素晴らしいなあ……』
「いい加減に……やあぁッ!!やめろぉ!!!」
『胸もなかなかの大きさですよね。美味しそうだぁ』
男達の掌と舌が、友紀の曝された肌を這い纏わり、鳥肌が立つような感覚と、異臭を放つヨダレとで汚染していった。
男達は、わざとらしくベチャクチャと音を鳴らして舐め、甘えたような鼻声で友紀の身体を誉めそやす。
これが愛しい彼氏との〈まぐわい〉なら、友紀は歓喜にも似た感情に包まれるだろうが、唾棄すべき男達との強制的な戯れでは、反吐が出そうなくらいの嫌悪感しか感じない。
逃げ出そうにも大の字の体位のまま身動きは取れず、かろうじて動かせる頭部を振り回すか、胴体を捩るだけの足掻きに終始していた。
そんな友紀の肌には、男達の呼吸が吹き付けられ、宥めるように擽ってくる。
その呼吸は次第に強さを増し、女性の魅力の部分に近づいていった。
「い、い…嫌あぁぁぁッ!!!!」
ブラジャーに寄せられた胸肉の谷間に、左右から掌が滑り込み、その指先は胸の山頂にある突起物を探って、ブラのカップの中をまさぐった。
『アハハ……乳首見つけたぁ』
『あ、こっちにもあったぞ。ウフフフ……』
「あ"〜〜ッ!!き、気安く触る……やあぁぁッ!!!」
罵声の中に、哀れの色が混じりはじめていた。
異性からの憧れの感情を一身に受けてきた友紀。
誰の目から見ても素敵な男性のみと関係を重ね、常にオシャレと呼べる恋愛だけを経験してきた。
美貌・媚態
そのどちらも使いこなせる友紀は、その美の力の強さを知っていたし、それを維持する事の辛さも知っていた。
それらを失う事の恐怖に人知れず怯え、日々、己の身体を磨いていたのだ。
全ては自分の為。
全ては誰からも羨まれる生活を手に入れる為。
こんな下劣な男共の毒牙に掛かり、肉体を楽しませる為などでは決してなかったはずだ。
(こ、こんな奴らに……私が………)
またも断末魔の叫びが鼓膜を叩き、二つの最後の防着までもが身体から引き離された……瞳から涙がポロポロとこぼれ落ちた……。
「やめろって言ってんだろ!!もうやめろよぉ!!!」
もう怒声ではなかった……顔は赤く染まり、眉も目尻も情けなく下がっていた……涙にアイシャドーが滲み、マスカラが溶けて流れ落ちた……黒い涙はメイクを汚し、それは気丈な仮面を蝕んで、哀願を滲ませた泣き声を発せさせた。