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凪いだ海に落とした魔法は
【その他 官能小説】

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凪いだ海に落とした魔法は 3話-63

日曜日。僕たち四人は学校近くの百貨屋に集まった。目当てのものを買ってから、電車に乗って僕の自宅へと向かう。定期券があるからいいものの、僕に取っては二度手間だ。“決行場所”がなぜ僕の家になったのかと言うと、単なる消去法だったりする。女子二人は男子が自分の部屋に入ることに抵抗があり、沢崎の家では駅から遠すぎるとの抗議が挙がった。僕もあまり自分の部屋に人を入れたくはなかったのだが、そこで我を通すほど協調性がないわけでもない。不満を飲み込み、我が棲み家へと三人を招き入れた。

「何だ。俺の部屋よか片付いてるじゃんか」沢崎が僕の六畳の部屋を一望して言った。
「まあ、こんなこともあろうかと一応ね」

時に自分は小心者なのでは、と疑うほど用心深い性格をしていて良かった。

「片付けたんだ?」と白川。
「用心深い人」日下部が舌打ちする。なぜ舌打ち?
「まあ適当にくつろいで」

途中で立ち寄ったコンビニで買った飲み物やスナックを広げながら、四人は中身のない会話をひとしきり交わして、消閑の時を過ごした。談笑が一段落してから、白川が百貨店のビニール袋をごそごそと探り出す。

「ねえ、そろそろ始めない?」
「貫通式だな」と沢崎が言った。
「本当にやるのか」

僕は日下部の表情を盗み見る。別に嫌そうな顔はしていない。

「嫌ならやらなくてもいいじゃない。ただ、お金は無駄になる」

事実だけを機械的に指摘する口調で日下部が言った。

「ビビってんのか。お前」
「アホ。こんなこと、わざわざ四人も集まってやることなのかって言ってるんだ」
「あのな、それを今になって言い出すことをビビってるって言うんだぜ?」

沢崎が僕のビニール袋を指差して笑った。それを言われると反論はできない。

「私は一人だとちょっと怖かったから、みんなでやりたかったんだけど。志野くんは男の子だしね」白川が言う。
「分かった。もういい。覚悟を決めよう。――ああ、どんどん不良になっていくな」
「不良だってっ!」

僕の嘆きに、白川が手を叩いて大袈裟に笑う。反動で膝を上げた拍子にスカートの中が見えそうになるが、気にしない。気にするものか。

「今時、こんなこと不良の特権ってわけでもなくない?」
「少なくとも、偽のテスト問題を生徒に売り捌く行為よりは健全であることは確かね」

日下部の賛同に白川は「だよねっ!」と喜色も露にハイタッチを要求する。日下部は口を半開きにし、目を丸くして、突き出された両手をぽかんと見詰めた。遥か遠くの部族の奇怪なジェスチャーに面食らったような顔。一秒間の思考停止と、もう一秒間の逡巡のあとで、躊躇いがちに彼女は自分の両手を重ね合わせた。実にソフトタッチなハイタッチ。

「まあいいか」と僕は言った。
「OK。じゃあ誰からやる」

沢崎が自分のピアッサーを取り出し、開封して説明書を読み始めた。


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