アイカタ―――前編-1
おっぱいって、ええよなあ……。
ふわふわのむにゅむにゅで、ぽよんぽよんのぷにぷにやで。
この世でこんなに手触りのええもん、他にちょっと思いつかへんわぁ。
悩みとか心配ごととかあっても、こうやっておっぱい触ってるだけで、なんかちょっと紛れる気がするもん。
真弓が巨乳でほんまによかったわ。
真弓にええ乳を与えし神様―――グッジョーブ………。
「……太?……健太?……ケンタってばっ!!」
「………へっ?」
思いもよらぬドスの効いた声で顎の真下から怒鳴り付けられて、俺はハッと我にかえった。
「『へ?』やないって!アンタこれ……いつまで揉んでんの?」
暖房のきいたあったかい真弓の部屋。
こたつに入ってる真弓に俺が後ろからひっつくような格好で、俺たちは制服姿のままラッコ座りの姿勢。
そのままぼんやりとテレビを眺めてるうちに、勝手に手がもぞもぞと動き――――気がつけば俺はもうかれこれ20分以上、ひたすら真弓の乳を揉んでいたらしい。
「……え、ええやん別に。揉みたいねんもん」
ブラウスの下から突っ込んだ手に改めて力を込めながら、俺は真弓の頬に唇を押し付けた。
「……もーう、いややっ!そんな上の空で揉まれたって嬉しくもなんともないし!」
真弓は鬱陶しそうに俺のキスを払いのける。
「別に……上の空なことあらへんやん」
と言いつつも、実はそれは図星やから、俺の口調は誠に弱々しい。
「結局――今エッチする気あるん?ないん?どっちなん?」
苛々とした口調で言いながら真弓が俺を睨みつける。
ぽよんぷよんのおっぱい天国を突然追放され、いきなり「ヤる」か「ヤらないか」の選択肢を突き付けられて、俺は一瞬返事に詰まった。
―――愚か者!男が乳を揉んだからというて、毎度毎度エッチしたいだけやと思うでないぞおおっ!!
―――と、反論したいところやけど、そんなことを言えばますます真弓を逆上させるのはわかってるから、俺はひとまずゴロニャンモードでごまかすことにした。
「そ、そらぁ……したいに決まってるや〜ん。真弓もしたいくせに〜うりうり!」
甘えた声を出しながら柔らかな肉の先端を指先でつまんで刺激を与える。
「あっ……ん!もうっ!ケンタのアホっ!」
一瞬は鼻にかかった声を漏らしながらも、真弓は俺のスネに一発蹴りを喰らわすと、手を振りほどいてバッと立ち上がった。
「いったぁっ!蹴らんでもええやろ?」
俺もさすがにムッときてつい口調がきつくなる。
「だってアンタがしつっこいねんもん!」
真弓は捲れあがった制服を直すと、ドスドスとガニ股でこたつの向かい側に移動してしまった。
色気もへったくれもあったもんやない。
―――お前は女子プロレスラーか。
「なんでやねん。この前ん時は真弓のほうが『もっといっぱいしてほしい〜』とか言うてたやん」
「ア、アホっ!変態!」
今度は勢いよくクッションが飛んできて俺の頭に当たった。
ゆでダコみたいに赤面した顔はなかなかカワイイ。
「もう……ケンタなんか知らんわ!」
真弓はこたつの上にあったポテチの袋をビリビリと破いて二、三枚つまむと、その膨れっ面とは裏腹に、ちゃんと俺が食べやすいように袋の口をこっちに向けてくれた。
その動作につられるように、俺も二、三枚。
これでもう無言のうちに仲直りが成立したようなもんや。
そもそもこんな程度の言い争いは、俺らにとっては当たり前すぎて、言わば夫婦漫才みたいなもん。
一通り言いたいことを言い終わればお互いケロッとなるのはわかっているから、喧嘩も気楽に出来る。