無銭湯記スパゲッチュー-4
第4話『出会い』
「そいつをこっちに渡せ!」
パン屋のおやじは、そう言って俺に怒鳴って来た。
『シーフ(泥棒)』とは言え、まだ小さい子供だった。そいつは俺の背中に隠れて、俺の服の裾を握り締めて、ブルブル
と震えていた。
パンを一つ盗んだぐらいで、大勢の大人で追い立て回さなくても、よさそうなものだが。
「金なら俺が払うよ」
庇い立てするつもりでは無かった。無かったのだが、不意に俺の口がそんな言葉を口走る。
それを聞いてパン屋のおやじは。
「そんな奴に関わると、ろくな目に合わんぞ!」
などと、捲くり立てて居た様子ではあったが。
背に腹は変えられなかったようである。おやじは、俺から150G受け取ると。
「今度やったら、ただじゃおかないぞ! 小僧っ!!」
などと、捨て台詞を残して、とっとと立ち去ってしまった。
「大丈夫かい? 坊や」
「うっせぇー! じじい! あたしは女だーーぁ!」
持っていたパンを俺の口にむりやり押し込んで、シーフの子は走り去って行った。
「このガキ! こんど会ったら、死なすー!!」
つづく